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怪しい宗教にのめり込む両親のもとで少女は何を信じるのか? 南沢奈央の読書日記

7/21(金) 17:01配信

Book Bang

 どうやらわたしは舞台の仕事の間は小説が読めなくなるようである。この読書日記を見てくださっている方はお気づきかもしれないが、6月頭から小説を読んでいない。読もうとしたことはあったけれど、物語に没頭する体力と余裕が無くて、“また集中できるときに”と泣く泣く保留することになった本が数冊、勉強机の上に積んである。
 その中で舞台の公演が終わったら一発目に読むのはこれだと決めていた。今村夏子さんの『星の子』だ。表紙と帯だけを眺め、開くことすら我慢していた。前作の『あひる』を読んだ際に、ページをめくる手が止まらなくなったからだ。今回もきっとそうだろうと予想して一回も開かず、だけど毎日目に入るところに置いて、すでに読んだ周りの評判も頭に入れて、『星の子』の存在感と期待感を膨らませていった。
 そして、千穐楽の翌日に早速読み始め、一気に読み終えた。かなり上がっていたハードルもまるでなかったかのように超えてしまう、おもしろさだった。今村夏子さんの小説世界に一度入ると、抜け出せなくなる空気感があるのだ。目を離してはいけないような。

 主人公ちひろは、生まれた直後から、全身の湿疹に悩まされていた病弱な女の子だった。どんな治療をしても一向に良くならなかったが、ある日両親が知人から勧められた「金星のめぐみ」という水を使ってみると、なんと完治した。これを機に、両親が怪しい宗教にのめり込んでいく―。
 洗脳された両親から洗脳されて育った娘。傍から見ると、可哀想で不幸な一家のように思える。けど内にいる両親はもちろん幸せで、ちひろもたくさんの愛をもらっていて、決して不幸とは思っていない。一方で、幸せとも思っていないところが、ちひろという人間の凄いところだ。水のお陰で自分の湿疹が治ったという体験をしているし、子どもの頃から宗教の中で当然のように育ってきたわけだが、完全なものではないとも分かっている。
 水によって改善される症状の中に「薄毛」もあるというのに、父親の薄毛にはまったく効果があらわれないことに気が付いている。また、あやしい宗教から目を覚まさせるために親戚が水のボトルの中身を公園の水道水に入れ替えたのに、両親はそれに気づかずに、「水のおかげで調子がいい」と嬉しそうに話している姿を見ている。不思議に思いながらも、ちひろは中学三年生になっても「金星のめぐみ」を飲み続けている。
 宗教という深いテーマに対して、主人公がどちらにも偏らずに中立で描かれている。だからこそ、“信じる”とはどういうことだろう、“幸せ”とは何だろうと考えさせられる。

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最終更新:7/21(金) 17:01
Book Bang

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