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氷河で75年前の遺体、アルプスの融解著しく

7/21(金) 16:29配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

アルプスで相次ぐ遺体発見、原因は毎年1m近く解けている氷河に

 7月13日、スイス・アルプスのツァンフルロン氷河の近くで、スイスのスキー会社社員が設備の定期メンテナンスを行っていたところ、氷から突き出している足を見つけた。さらに調べると、靴と帽子、そして凍結して黒ずんだ2人の遺体が見つかった。

【写真】氷河遺体の発見現場と遺品の懐中時計や本 4点

 靴職人だったマルスラン・デュムランと教師だったフランシーヌ・デュムランの夫婦が行方不明になったのは今から75年前のことだ。

 スキー会社のCEO、ベルンハルト・ツァンネン氏は、「発見した社員は警備員に通報し、私が警察に連絡しました」と話す。翌14日には、現場にヘリコプターが到着し、遺体を傷つけないように、氷河から大きく氷を切り出した。そして19日には、DNA鑑定によって1942年8月15日に行方不明になったデュムラン夫妻の遺体であることが確認された。

 この件を最初に報じたスイス紙「Le Matin」によると、この雪深い地域から遺体が見つかるのはこれが初めてではない。2012年には1926年に消息を絶った3人の兄弟が、2008年には1954年に遭難した登山者が見つかった。さらに2012年には、2008年に山で行方不明になった2人の遺体が見つかっている。

 1925年以降、アルプスやその周辺では、280人が行方不明になっている。

失われゆく氷河

「この氷河では、毎年50センチから1メートルほどの氷が失われています」とツァンネン氏は話す。「80年前は、今よりもはるかに大きかったのです」

 デュムラン夫妻が見つかったのは地球温暖化が原因だと、ツァンネン氏は考えている。氷河が急速に解けたことで、埋もれていた遺体が露出したというわけだ。

 風光明媚で知られるアルプスだが、氷が着々と解けているのはまぎれもない事実だ。一番の問題は、どのくらいの速さで解けているかだ。

 2006年に発表された調査でアルプスの夏季の氷は2100年までに消滅するとされていたが、2007年の調査はさらに厳しい予測となり、氷は2050年までに消えるとされている。

 スイスのチューリッヒ大学に拠点を置く世界氷河モニタリングサービス(WGMS)の報告書によると、アルプスの氷河の厚みは2000年から2010年の間に毎年1メートルずつ減少している。

 WGMSの所長は、2013年の報告書でこの氷の融解を「前例がない」と評している。

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