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イヌが人懐こくなったのは「難病遺伝子」の変化による、最新研究

7/21(金) 18:08配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

妖精のような顔つきや高い社交性もたらす人の遺伝子疾患との関連が判明

 生後11カ月のオールド・イングリッシュ・シープドッグのマーラにとって、世界はまだ見ぬ友人にあふれている。

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 マーラの飼い主のブリジェット・フォン・ホルト氏は、「彼女は超がつくほど社交的です。その理由を知りたくて、遺伝子型の解析までしてしまいました」と言うから驚きだ。

 しかし、米プリンストン大学の進化生物学者であるフォン・ホルト氏が愛犬の遺伝子型に興味を持ったのは当然だった。彼女の研究チームは、3年前からイヌとオオカミの社会的行動の遺伝的基盤を調べているからだ。

 これまでの研究により、イヌは同じような環境で育てられたオオカミに比べて社交的である、すなわち、人間のことをよく見ていて、その指示や命令によく従うことがわかっている。

 彼女が7月19日付けの科学誌「Science Advances」に発表した論文は、イヌとオオカミの遺伝的基盤の違いについて、興味深い結果を示している。マーラのように極端に社交的なイヌでは、GTF2IとGTF2IRD1という2つの遺伝子に変異があることが明らかになった。一方ヒトでは、これらの遺伝子の変異は、妖精のような独特な顔つきや人懐っこさなどを特徴とする「ウィリアムズ症候群」と関連づけられている。

 フォン・ホルト氏は、イヌの遺伝子のこの変異は正常な機能を抑制し、ウィリアムズ症候群の患者と同じ問題を引き起こすのではないかと考えている。

「私たち人間は、ある行動症候群をイヌにもたせることで、愛玩動物を作り出したのかもしれません」と彼女は言う。

ホットな問題

 1万年以上前にオオカミから進化したイヌは、人懐っこい顔をして尾を振りながら、私たちの食物探しを手伝い、ほかの動物から守ってくれた。

 イヌの行動の専門家である米ペンシルベニア大学のカレン・オーバーオール氏によると、チワワからマスチフまで、イヌたちがどのようにして人間の親友になったのかという研究が、現在、ホットなのだという。

 フォン・ホルト氏は、2010年に米オレゴン州立大学の動物行動学者モニク・ユーデル氏と共同でイヌとオオカミのゲノムを調べ、イヌが家畜化される過程でWBSCR17遺伝子に変化が生じたことを発見し、科学誌「ネイチャー」誌に発表した。WBSCR17もウィリアムズ症候群の関連遺伝子だった。

 その後、彼らのプロジェクトは休眠状態にあったが、2014年にフォン・ホルト氏とユーデル氏が研究資金を確保できたことで、ダックスフント、ジャック・ラッセル・テリア、バーニーズ・マウンテン・ドッグなどさまざまな品種のイヌ18頭と人間に慣れた10頭のオオカミを使った新たな実験が始まった。

 科学者たちは今回、イヌの行動も検証した。工夫しないと開けられない箱の中にソーセージのかけらを入れ、この箱を開けられるようにイヌとオオカミを訓練した。それから、よく知る人がいる場合、知らない人がいる場合、人がいない場合という3つの状況で動物たちに箱を開けさせた。

 どの状況でも、オオカミはイヌよりも大幅に良い成績をおさめた。人がいるところで箱を開けなければならない場合には、その差はいっそう大きくなった。

「イヌたちに箱を開ける能力がなかったわけではありません。人の様子を見るのに時間を取られすぎて、制限時間内に開けられなかったのです」と、フォン・ホルト氏は言う。

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