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踊り場の中国企業は、「祖業」発展させ成功した日本企業を見習え

7/21(金) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 イノベーション──。この言葉は、中国で今、最も心に響くキーワードの1つとなっている。

 というのも、長年2桁成長を維持してきた中国は、ここにきて経済成長が踊り場に来て、ある種の疲労感が出始めているからだ。経済の“分母”が大きくなった今、経済成長の減速はある意味、自然な成り行きではあるが、廉価な労働力を駆使した大量生産による経済促進策も効果を失いつつある。

 そうした状況において、中国では政府も企業も「イノベーション」に活路を求める方向へと転換し始めた。こうした選択自体は間違っていないが、看過できない問題もある。

 まず、経済を理解していないにもかかわらず、上層部に評価してもらえる実績を求める地方の役人たちが、「イノベーション」を「新規事業」と捉えてしまう傾向があることだ。これは、かなりの企業の経営者たちにも同じ傾向が見られる。

 その結果、これまで何十年もやってきた仕事を放り出してしまい、話題の産業や新規事業に飛び付いてしまうのだ。そうした事業は、銀行の融資が受けやすいほか、政府からの支援を得やすいことも背景にある。

● 「極東一」の駅舎を 高官が鶴の一声で解体

 中国でこのような実例を目にしたとき、私はいつも山東省の省都・済南市にある「済南駅」の旧駅舎のことを思い出す。

 済南駅は、1904年にドイツ建築家のハーマン・ファーシアー氏が設計、建設したもの。かつて、戦後のドイツ連邦共和国が出版した『極東の旅』にも、アジア最大かつ極東一の駅として掲載されたほどで、済南市民にとってはランドマーク的な存在だった。

 しかし、1992年初め、山東省の地方都市から抜擢されたある高官の鶴の一声で、この旧駅舎が解体されてしまう。確かに、極東一と自慢していた旧駅舎であっても、経済発展に伴う交通事情に対応できなくなったという側面もあった。だが、文化財の価値に対する理解や見識が、“田舎役人”の域を超えていない高官の意識がより問題だったのである。

 当時、この高官は「済南駅は植民地時代の象徴だ」と自らの決断を正当化していたが、こうした口実こそが古いイデオロギーに凝り固まっていることを逆に象徴している。

 1995年になって、3.9億元(約62億円)を投じて新しい駅舎が建てられた。だが、中国の田舎町でよく見られる安っぽい外観と、中身のない駅舎を見た済南市民は泣いてしまった。そして20年経った今でも、乱暴かつ無知な行政に対する怒りと、無力感を覚えた人々が、高官を痛烈に批判し続けている。

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