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英国に残るか、日本に帰るか……決断の時が迫る――。「言葉にできない親密な関係性」にじわじわハマる! 英国幻想ファンタジー最新作

7/21(金) 17:30配信

ダ・ヴィンチニュース

 『英国幻視の少年たち』(深沢仁/ポプラ社)は、イギリスを舞台に繰り広げられる、幻想的で、ややシニカルな雰囲気を漂わせた「少年たちの選択」がじわじわと胸に迫るライト文芸だ。

 一族の変わり者である叔母を頼り、イギリスに留学をした大学生の皆川海(みながわ・かい)。霊感のある彼は、とある女性の「死」から、逃げるように日本を去っていた。

 ウィッツバリーという片田舎の街に住むことになったカイは、そこで「妖精」と万年貧血の「赤毛の少年」と出会う。死人のような顔色をした華奢な彼の名はランス・ファーロング。「英国特別幻想取締報告局」の一員だという。

 英国特別幻想取締報告局――とは、「妖精や精霊、その他の幻想的生命体の研究・保護・監視などを目的として設立された機関」であり、ウィッツバリーを担当地区にしているランスは、妖精の問題を解決するため、カイの前に現れた。カイがランスに出会ったその日から、カイの日常は「幻想的な非日常」に変わっていく。

 本作は一貫して、どこか物寂しさをたたえているように感じた。カイもランスも、自分の感情を隠すことに長けて、「秘密」や「哀しみ」を抱えている。それが、どんより曇った空と、善悪の曖昧とした「幻想的な生物たち」が生きるイギリスという舞台に、とても合う。作品を通して漂う「明瞭でない世界観」が、「ポジティブでいること」や「物事の区別をハッキリつけること」に疲れた読者にとって、心地よく酔える小説だと思う。

 カイとランスの関係性もいい。お互いに一線を引いていて、容易には近づかない。けれど、どこか「つながり合う部分」があり、カイはランスを放っておけないし、ランスもカイを気にかけている。友人でもない。恩人でも、上下関係があるわけでもない。2人の寄り添うようで、寄り添わない「言葉にできない親密な関係性」が、じわじわとハマる。

読書メーターの感想でも、本作の世界観やカイとランスの関係性に惹かれた読者が多いのではないだろうか。

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