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犯罪が起こる前に見抜く!? 史上最速で事件を解決、探偵が「人を殺させない」ミステリ『探偵が早すぎる』が面白い!

7/21(金) 17:30配信

ダ・ヴィンチニュース

 先日まで、推理しない探偵がテレビドラマを賑わせていたが、探偵=事件を解決するものというのは万人共通の見解だろう。ところがここに、またニュータイプの探偵が登場した。推理はする。解決もする。だけどそもそも事件を起こさせない。『探偵が早すぎる』(井上真偽/講談社)に登場するのは、事件に先んじてトリックを見破り依頼人を救う、究極の名探偵なのである。

 こんなにトリッキーで面白い探偵小説を読むのは久しぶりである。なにせ上巻、語り手のほとんどが犯人なのだ。

 父の死によって5兆円もの遺産を手にした高校生の少女・一華、その命を狙う親族にさしむけられた刺客が、あの手この手で犯罪計画を練る。その一部始終が包み隠さず語られるのだが、いざ実行にうつさんとしたその瞬間、あるときは仕掛けが不発に終わり、あるときは凶器が消え、愕然とした犯人にいずこからか声がする。何もかも見抜いて事件を防ぐ伝説の名探偵――「トリック返し」による謎解きの声が。

 最初から、読者あるいは視聴者に犯人の正体が提示されている、というスタイルじたいは他にもある。たとえば古畑任三郎。でも、老練な彼でさえ、事件現場に登場するのはすでに人が死んだあとだ。事前に疑いはしても、事件を防ぐことはできない。防いでしまったら、自分の見せ場がなくなってしまう。ドラマとして成立しない。それなのに、本作はその「防ぐ」ことが読み手のカタルシスにつながっていく。しかもこの探偵、その名のとおり、犯人が仕掛けようとしたのと同じ手で犯人を返り討ちにする。まだ罪に手を染めてはいないのに。それも悪の成敗というだけでなく、どこか楽しげに、むしろ嗜好のような趣で。「あ、この探偵もわりとやばい奴だ」とうすうすわかるが、それもどこか爽快に感じてしまうから不思議だ。

 さらに、上巻の最後まで探偵の正体はさっぱりわからない。一華につかえる謎の家政婦・橋田が呼んだ信頼に足る相手らしいのだが、一華と面会するより先に、彼女のあずかりしらぬところでさっさと事件を解決、もとい防いでいく。そのためおとぼけ気質の強い一華は水面下の出来事には何一つ気づかずのんびり過ごしているという、この対比がまた面白い。

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