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「世界でもっとも影響力のある50人」に選ばれたレイ・イナモトさんが考える「日米の働き方」と「アメリカで起業すること」

7/22(土) 8:10配信

ライフハッカー[日本版]

「広告業界のイチロー」という異名をとる人物を知ったのは、2017年5月にニューヨークで行われたテックイベントでした。登壇した日米の起業家ら14名の中でも、ひときわ異彩を放っている日本人こそが、世界でもっとも注目されているクリエイティブディレクター、レイ・イナモト氏だったのです。

【画像】「世界でもっとも影響力のある50人」に選ばれたレイ・イナモトさん

イナモト氏はこれまで、Forbes誌やCreativity誌で「広告業界でもっともクリエイティブな25人」「世界でもっとも影響力のある50人」に選ばれるなど、受賞歴は多数。1年半前にニューヨークで起業し、トヨタ、ユニクロ、サザビーズなどのクリエイティブディレクターとして世界的企業のブランディングを手がけています。このように今では高い評価を受ける同氏ですが、そのテックイベントでの講演によると、これまでかなり苦労を重ねてきたとのこと。

もっと話を聞きたいと思い、後日ニューヨークにあるオフィスを訪問。世界の頂点に立つイナモト氏が考える「日米の働き方」や「アメリカで起業すること」について、うかがってみました。

レイ・イナモト(Rei Inamoto)

東京都出身、ニューヨーク在住のクリエイティブディレクター。スイスの高校を経て、アメリカのミシガン大学で美術とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後の1997年、日本に帰国し、Noriyuki Tanaka Activity社に就職。98年に再渡米し、99年にニューヨークの大手デジタル・エージェンシー、R/GA社に転職。2004年から15年まで欧米大手のAKQA社でGoogle、Nike、Audi、Starbucksなど、グローバルブランドのデジタルマーケティング戦略を担当08年より同社のクリエイティブ最高責任者、CCOに就任。15年に退職し翌16年2月、ビジネス・インベンション・スタジオ「Inamoto & Co.」を設立。

日米の働き方の違い:「決めてコミットすることが大事」

── 先日のテックイベントの講演で、初めて就職した日本の会社での経験を「最高で最低だった」と話していたのが印象的でした。

イナモト:そうですね。クリエイターのタナカ・ノリユキさんの元で修行させていただきました。経験、そして刺激という意味では最高だったと思います。「最低」と言うとかなり語弊があり、失礼だとは重々承知なのですが、週4~5日は徹夜をするなど、労働時間はひどかったですね(苦笑)。朝11時に出社して帰宅は翌日の朝8時、帰ってシャワーを浴びて仮眠をとり、また昼ごろに出社、というような毎日でした。72時間寝ずに仕事をしたこともあるとおっしゃっていた先輩もいました。

日本の広告業界全体でもう何十年もずっと、このような異常な働き方がまかり通っていて、僕が日本で働いた90年代後半は、そのようなご時世の真っ只中。「仕事は好きだけど、この働き方を続けるのは無理ではないか」と感じていました。

それから、日本でもおもしろい作品はいっぱい出ているけど、高校でスイスに、大学でアメリカに出たのに、日本に引きこもっちゃうのは早いかなというのも感じていました。せっかくなら、世界のトップを争うような大都会で働きたいな、と。それで退職し、大学卒業で得たOPT(企業での実地研修)を利用してニューヨークに来ました。

── 就職先はすぐ見つかりましたか。

イナモト:6カ月ぐらい決まらなかったです。レジュメ(履歴書)を毎日いろんな会社に送っては返事を待つの繰り返し。全部で数百枚は送ったと思います。

── その甲斐あって大手デジタル・エージェンシーに就職が決まりましたね。でも最初は、複雑なデザインコンセプトを英語でクライアントにうまく説明できなかったと講演でおっしゃっていました。

イナモト:そこで言葉の壁にぶつかりました。でも自分なりにたどり着いた解決策は、いかに込み入った内容でも、10歳ぐらいの子どもでもわかるシンプルな言い方で説明すれば理解してもらえるということでした。当時の自分の弱点が今の強みになっているし、誰でも弱みを強みに変えることができると学びました。

── 日米で働いて、働き方の違いを感じることはありますか。

イナモト:ありますね。でもそれに関連した話で、「働き方」とは少し違いますが、最初にこれをお伝えしたいと思います。最近日本の方によく相談されることは、「東京オリンピックに向けてどうしたらいいか」ということなのですが、それよりもっと重要なのはその後だと私は思っています。実際、2020年以降どうしたらいいか戸惑っている大企業がたくさんあるんです。前回の1964年と状況がまったく違って、今回はオリンピックで日本の経済が良くなるという保証はまったくないわけです。

そこで、日本の企業や社会が今後やっていかなければいけないと、僕なりに考えたことが4つあります。

1.年功序列をなくす
2.男尊女卑をなくす
3.英語教育に力を入れる
4.決断してコミットする

── 1と2は文化的な背景がからんでいるので、なかなか難しい問題ですね。

イナモト:日本語には敬語がありますし、先輩後輩という文化もありますからね。だからといって、不可能なことではないと思っています。トップの人がどういう決断をするかにかかっています。ユニクロみたいにグローバルにどんどん伸びている会社を見ると、年功序列にこだわっていません。若い人でもリーダーになれる会社は少ないかもしれないけど実際存在するので、実現不可能なことではないでしょう。

男尊女卑も同じで、女性をリーダーにすればいいだけのこと。確かに根深い文化だけど、固定観念の問題なので、会社が抜擢してしまえばいいだけです。一番いけないのは、男尊女卑で、自分のエゴや年功序列ばかり気にしている日本のおじさんたち。若い人や女性をリーダーにすれば、日本は変わりますよ。

── 3については、英語を克服してきたイナモトさんだからこそ、説得力があります。

イナモト:言葉の問題を懸念して海外に出ない人が非常に多いと感じます。でも、モバイルを使っていくらでも勉強できる時代ですから、英語ができないというのはただの言い訳に過ぎません。たとえば、YouTubeを1日30分観て勉強すれば、3~6カ月ぐらいで基本的なコミュニケーションができるようになると思います。低価格のスカイプレッスンも探せばいくらでもあります。あとはやる気だけです。

── アメリカ人とうまくコミュニケーションをとれず、自信をなくすという話もたまに聞きますが、経験を通して何かアドバイスはありますか。

イナモト:忘れることって大事だなと思います。覚えておかなければいけないこともたくさんありますが、成功も失敗も1日で忘れるのがいいんじゃないかなと、今質問されて思いました。仕事の話でも、よく昔の成功話を繰り返す人がいますが、本当に伸びる人って前しか見ていなくて、成功しても1日で忘れると思うんですよね。失敗も同じ。クヨクヨしても解決しないし、次に失敗しなければいいだけのことですから。

── 4の「決断してコミットする」とは、どういう意味でしょうか。

イナモト:日本人ってなかなか物事を決めないんですよ。ここが特に「日米の働き方の違い」ってことなんですが、一昔前にアメリカで読んだ記事に、「日本人ビジネスピープルにYes or Noの質問をしたとき、どんな答えが返ってくるか」と書かれてありました。何て答えると思いますか?

返ってくるのは「or」なんです。だから日本人とはビジネスしにくいよねっていうジョーク混じりの記事でしたが、確かに的を射ていると思いました。決めたがらない根本に何があるかというと、決めて間違えるのが怖いから、自分の責任にしたくないから、決めずにコミットしないんです。それでは物事が進まないはずですよ。

ユニクロの柳井社長と話して思うのは、「決断してコミット」される方なんですよね。やってみないとわからないことっていっぱいあるから、間違っていてもとにかくやってみることが大事です。

── 今出てきた4つのことは、日米で働いてきた経験から学んだのですか。

イナモト:そうですね。偉そうなことを言っていますが、海外でずっと仕事をしてきた経験に基づいています。柳井さんのような日本のトップの経営者が言うともっと影響力があるでしょう。でも手前味噌ですが、僕なりに世界を見てきて感じたことなので、ただの思い込みではないと思います。

── 日本で過労死が問題になっています。過去のイナモトさんのように、仕事に押しつぶされている人もいますが、何か思うことはありますか。

イナモト:とにかく世界に目を向けてほしいです。僕が駆け出しのころはインターネットなんてなかったけど、今はモバイルからすぐに世の中とつながる時代。自分の手元で発信することが国境を超えて伝えられるようになったわけですから、グローバルを常に意識してほしいですね。

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