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新しく設定される投信の購入は避けたほうがよい

7/22(土) 9:01配信

会社四季報オンライン

 毎月、必ず複数本の新規ファンドが設定される。ちなみに7月中に新規設定されるファンドは追加型で30本、単位型で1本だ。下記の表は追加型30本の一覧である。

 基本的に、投資信託を新規設定時点に買う必要はどこにもない。もちろん新たに投資信託会社が設立され、第1号ファンドの運用がスタートするというケースであれば、新規設定ファンドも容認されるべきだ。しかし、すでに設立から何年も経過している投資信託会社が新規ファンドを設定する意味があるのかという点については、かねがね疑問に思ってきた。なぜなら、新規に運用がスタートするファンドほどそれを購入する個人にとって不利な条件はないからである。

 どういう点で不利になるのか。それは、過去の運用成績が分からないという点に尽きる。過去の運用成績、とりわけ基準価額の値動きが分からなければそのファンドが持っているリスクがどの程度なのかを把握することはできない。

 日本の投資信託は、新規設定から償還までの期間が3年程度と言われている。つまりせっかく運用がスタートしても3年後には解約が相次ぎ、運用資産が激減してそれ以上の運用継続が困難になり、繰上償還されるというケースだ。

 実際、個別ファンドの資金純流出入状況を見ても、新規設定時の純資産総額が最大でそこから徐々に解約が増え、資金が流出して純資産総額がどんどん縮小してしまうケースがかなりある。新規設定ファンドを買うにあたっては、こうした資金流出のリスクがあることも頭に入れておく必要があるだろう。逆に、運用が開始されてから10年以上経過しているファンドで一定の純資産総額を維持していればある程度資金が流入しており、短期のうちに繰上償還されるリスクが低いとも考えられる。

 また、いろいろなファンドを選べる選択肢が提供されることも大事だが、あまりにもファンドの本数が多いと選ぶことが困難になる。特に、これから投資信託で資産形成を始めようと考えている場合、現時点のラインナップを見て購入したいファンドを自ら選ぶのはほぼ不可能と言える。その結果、販売金融機関の言うなりに投資信託を買わされてしまう。

 以上の点から、新規設定ファンドを買うのは受益者にとって圧倒的に不利であることがお分かりいただけると思う。にもかかわらず、なぜ投資信託会社は新規ファンドを次々に設定するのだろうか。

 投資信託の総本数を見ると、このところ本数の増加傾向にやや歯止めが掛かった感もあるがそれでも高水準を維持している。2017年6月末時点の総本数は6086本だ。アベノミクス相場がスタートした2013年1月の総本数が4378本だったことから考えると、急ピッチで新規設定が行われたことになる。

 新規設定を増やしてきた理由は、それが販売金融機関にとってメリットになったからだ。儲かりそうな投資対象、運用手法などをアピールして、古いファンドから新規設定ファンドへの乗り換えを勧める。それを繰り返すことによって、販売金融機関には新規設定ファンドから購入手数料が入るという算段だ。また、投資信託会社からすれば、古いファンドから新しいファンドに資金がシフトすることによって資金の囲い込みが出来る。こうして長年にわたり、投資信託は金融業界にとって手数料を稼ぐツールとして重宝され続けてきた。

 投資信託全体の設定額から解約額と償還額を差し引いて資金純流出入の推移を見ると、2004年から2016年は年間ベースで資金純流出になった年は1度もない。月間で資金純流出になった月はあっても、年間ベースではこの12年間、日本の投資信託市場には安定して資金が流入し続けている。

 これを、投資信託に対する信頼度・認知度が上がり、安定的に資金が流入し続けているからなのか、それとも旧ファンドから新規設定ファンドへの乗り換えが進んで投資信託の中での囲い込みが一段と進んだからなのか、見方は分かれるところだ。

 ただひとつ確実に言えるのは、粗製乱造ぎみの新規設定ファンドを買うくらいなら、10年程度の運用成績を持ち、かつ純資産総額が安定的に推移している既存ファンドを購入した方が、個人にとってはるかにメリットがあるということだ。

 すずき・まさみつ●岡三証券の支店営業、公社債新聞社の記者などを経て独立。JOYnt代表を務める。金融ジャーナリストとして雑誌、書籍の執筆など多数。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

鈴木 雅光