ここから本文です

10年ぶりの新しい発声法、声が変わった(井上芳雄)

7/23(日) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 僕が主演を務めているミュージカルの舞台『グレート・ギャツビー』も、東京、愛知、大阪を経て、福岡の千秋楽(公演の最終日)が近づいてきました。闇の世界に生きるアウトローを演じたのは初めてで、大きなチャレンジだったという話を前回しましたが、ミュージカルの歌い手としても新しいことに取り組んでいます。声が太くなったのでは、と言われるのですが、実は10年ぶりくらいに発声法を変えたのです。

 僕は子どものころからミュージカル俳優をめざして、歌の先生に習い続け、東京藝術大学に入学。音楽学部声楽科を卒業した後も、ボイストレーナーの先生についていました。ところが、あるときから先生に教わることをやめました。というのも、俳優としてキャリアを積むと、自分の考えで判断しないといけない場面がたくさん出てきます。いちいち先生に聞けないですし、自分の成長のためにも人に習うのはやめようと思い、ここ10年くらいは、それまでに学んだやり方をベースに歌ってきました。調子が悪くなったら、声の出し方が悪いからだろうから、こう変えてみようとか、やっていたのです。
 ところが、今回の『グレート・ギャツビー』で歌唱指導の山川高風さんと出会い、発声のメカニズムを詳しく説明してくれた言葉に、すごく納得しました。僕なりにやってきたことの利点や間違っている点を冷静に指摘してくれて、「こうしたらもっと声が出ますよ」と教えてくれました。実際にやってみたら、確かにすごく歌いやすくなって、声も変わったのです。180度とは言わないけど、90度くらいはやり方を変えた感じです。

■体のどこを鳴らすか

 何が違うかと言うと、要は体のどこを鳴らすかという問題です。これまで僕は、口の上の部分も下の部分も使って歌っていました。あるパートは上でワーッと歌い、あるパートは下あごを使ってアーと歌っていたのですが、それだと響きの位置が変わって統一できないのです。
 僕はそういうものだと思っていたのですが、山川さんのアドバイスは「同じところをずっと響かせなさい」。僕は響かせるのに苦手な箇所があったり、うまくいかないときは歌い方で切り抜けてきたのですが、本当はきちんと鳴る同じところを鳴らし続けたほうがよくて、あとは筋肉で強弱を付けたりする、というやり方を教わりました。
 それだと、響かせるポジションが変わらないからすごく安定しているし、強弱もつけやすいし、ロングトーンで伸ばすこともできます。とても理にかなった歌い方で、1カ月くらい稽古するうちに、確実に変わってきたという実感を得ました。

 山川さんは、38歳の僕より少し上の40代の方です。オペラをやられていて、若いころは平気で高い声を出せていたのに、30代半ばで高音がぱたっと出なくなったそうです。それでボイストレーナーの先生を探して、力で声を出すのではなくて、ちゃんと響かせるように発声法を一から変えて、自分は生まれ変わったという話をしてくれました。
 僕は、声が出なくなったとは全然思ってないし、むしろどんどん出るようになっていると感じています。でも、山川さんの話は実体験だけに説得力がありました。僕も自分なりにやってきたけど、壁にあたることもあったし、先を考えても、いつ同じような経験をするかもわからない。なので、一度ちゃんと話を聞いて、やってみようと思えたのです。

1/2ページ

最終更新:7/23(日) 7:47
NIKKEI STYLE

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ライフスタイルに知的な刺激を。
生活情報から仕事、家計管理まで幅広く掲載
トレンド情報や役立つノウハウも提供します
幅広い読者の知的関心にこたえます。