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背筋も凍る『銀行員大失職』 仕事はなぜなくなる? 生き残る意外な人材とは?

7/23(日) 8:10配信

NIKKEI STYLE

■銀行業務の変化、細かく検証

 ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は毎月定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店に戻る。売れ筋は金融関連本という基本的な傾向は変わらないが、売れる本自体はより新しく出た本に少しずつ入れ替わっているようだ。そんな中でいま一番勢いがあるのは、銀行員の仕事の未来に焦点をあてた一冊の本だった。

 その本は岡内幸策『銀行員大失職』(日本経済新聞出版社)。銀行での仕事がこれからどのように変化していくかを展望しながら、今後の銀行にはどんな人材が必要かを論じた内容だ。刺激的なタイトルにひかれてページを開くと、書きぶりはいたってそっけなく感じられる。ところが、こういう仕事がなくなる、こういう仕事は人工知能(AI)に取って代わられると淡々と提示されるのを読み進めていくと、銀行で仕事をしている人なら背筋が寒くなること請け合いだ。決して読みやすくはないが、具体的な仕事の変化が迫力を持って読者に迫ってくる。

 著者の岡内氏は、不動産証券化・不動産投資信託(REIT)の資産評価、経営コンサルティングを手がける企業の代表取締役。大手銀行に勤めていたが、転身し独立起業した。それだけに銀行にどんな行員がいて、どんな業務改革が進んでいるか、身をもって知っている。その体験から銀行のあらゆる業務シーンで起きている変化、これから起きる変化を一つ一つ丹念に描いていく。そこから浮かび上がるのは、支店の窓口から本部の中枢まで、あらゆる職場で進む人材の劣化だ。提案型の営業ができず、新しい金融技術に対応できず、待ちの姿勢で失点を重ねないように業務をこなすタイプの行員が増えている実態が語られる。

■顧客志向、生き残りのカギに

 あとがきで著者は「金融に携わる多くの人を応援する意味で上梓(じょうし)した」と述べる。「人との繋(つな)がりがこれまで以上に重視されるだろう」とも記し、「新たな軸の中で活躍できる場が拡大する」とさえ述べている。現状にあぐらをかいていてはダメで、金融機関の役割や使命がどんどん変わっていくのに対応し、顧客志向の仕事の仕方を身につけて「大失職時代」を生き延びてほしいというのが著者の願いだ。

 「この辺の金融機関に勤めている人ならわかりきったことで、大きくは動かないかと思っていたところ、意外なほど部数が伸びた」とビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。銀行の中にいるだけでは見えてこない指摘が本書にはあるのかもしれない。
(水柿武志)
[2017年7月7日付けの記事を一部再構成]

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最終更新:7/23(日) 8:10
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