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「君もやってみないか?」の勧誘でパラ・パワーリフティングが強化中

7/23(日) 18:25配信

webスポルティーバ

 下肢障がいの選手たちによる「パラ・パワーリフティング」。ベンチプレス台を使用し、鍛え抜かれた上半身の力のみでバーベルを持ち上げ、その重さを競う。バーベルを持ち上げるのはわずか3秒程度。肉体のみならず、一瞬にかける強靭な精神力も求められる。1キロでも重いものを持ち上げるというシンプルさのなかに、心技体を極限まで磨く選手のドラマが凝縮されている。世界を見れば、健常者の記録を上回る階級もあり、パラリンピックでは人気競技のひとつになっている。

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 現在、国内でも競技者が増えつつあり、7月16日に北九州市で開かれた「ジャパンカップ」には、昨年のリオパラリンピックに出場した49kg級の三浦浩(東京ビッグサイト)、54kg級の西崎哲男(乃村工藝社)らトップ選手を含む44名がエントリー。昨年と比較すると10名増えて、そのうち7名が初出場だった。

 40代からでも正しいトレーニングを積めば、肉体も数字も変化を実感できること、健常者よりも強くなれる可能性を秘めていること、身体のメンテナンス次第で長く競技を続けられることなど、この競技の魅力は尽きない。現在は、3年後の東京パラリンピックを目指し、「新たに始めた若手選手や、他競技から転向する選手も多い」と関係者は話す。

 男子65kg級の篠田雅士(パワーハウス)と88kg級の南出悠有(みなみで・ゆう/個人)は、今年5月に東京・上野公園で行なわれた体験会に参加し、競技を始めた。競技の普及と人材育成に力を入れる日本パラ・パワーリフティング連盟では、全国で開かれるパラスポーツの体験会で積極的に広報活動をしており、彼らの存在はその成果といえる。

 転向組の選手には、冬季競技出身の選手もいる。男子97kg級の馬島誠(個人)は、元アイススレッジホッケー日本代表でバンクーバーパラリンピックの銀メダリスト。また、女子50kg級のマクドナルド恵理(日本財団パラリンピックサポートセンター)は女子アイススレッジホッケーのプレーヤーでもあり、男子59kg級の戸田雄也(個人)は車いすカーリングの選手でもある。3年後の大舞台を狙う彼らは今大会、それぞれのクラスで優勝し、存在感を見せている。

 また、こんな例もある。男子54kg級の尾上義喜(個人)は今大会が初出場。昨年、偶然会場の近くを通りかかり、「無料だったから」とこの大会を見学していたところ、スタッフに声をかけられた。「来年、出てみない?」。その時は想像もしていなかったが、連絡先を交換したことで、練習場に足を運ぶことに。「最初は渋々やっていたけれど、練習するうちに知り合いが増え、世界が広がっていった。仲間ができた喜びは大きく、競技を続けていきたいと思うようになった」と笑顔を見せる。

 アテネ・ロンドンパラリンピック日本代表で、昨年7月に肘の手術から復帰し、今大会数年ぶりに日本記録を更新した80kg級の宇城元(うじろ・はじめ/順天堂大)は、「新しい選手が増えるのはうれしいこと。究極のメンタルスポーツなので、自分の経験から何か助言をしてあげられれば」と話す。

 選手の裾野が広がりつつあるのと同時に、そのレベルも全体的に上昇傾向にある。その理由のひとつに挙げられるのが、パラ・パワーリフティング界の世界的指導者、イギリスのジョン・エイモス氏の直接指導だ。エイモス氏は元選手で、引退後は母国イギリスで初の金メダリストを育てた名コーチとして知られる。連盟の尽力もあり、今年4月から年に4回の予定で国内の強化合宿への招聘が実現。エイモス氏は、選手やコーチに技術指導とトレーニング指導を行なっている。

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