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カンパニー松尾が愛する、ウォン・カーウァイ作品 [FRaU]

7/23(日) 19:00配信

講談社 JOSEISHI.NET

「映画らしくない、でも、抜群にかっこいい。撮影の手法や、登場人物の関係性は、すごくAVっぽいと思った。だから自分の撮ったAVでも、さんざん真似しました。僕はAV監督だけど、かっこいいものが撮りたかったから」(AV監督 カンパニー松尾さん)

PROFILE

AV監督
カンパニー松尾さん
1965年、愛知県生まれ。AVメーカー「HMJM(ハマジム)」所属。代表作『私を女優にして下さい』『劇場版 BiS誕生の詩』など。

ウォン・カーウァイのDNAをAVに吹き込む

 「ウォン・カーウァイは普通に人気あるからね。なんで俺のところにわざわざ来てくれたの? まぁうれしいけどさ」

 そう謙遜しながら語るカンパニー松尾は、アダルトビデオを撮り、編集し、自らも男優として出演するスタイルで、一部の男性から熱狂的に支持されるAV監督だ。女性には馴染みがないかもしれないが、男子たちにとっては憧れの人物である。彼はAV撮影において、前戯の間もセックスの最中も、カメラを手に持ったまま撮影する「ハメ撮り」という手法を確立したことで知られているが、功績はそれだけにとどまらない。

 と、この手の話を女性向けの本誌でどこまで詳細に書けばよいのか、悩ましいところではあるが、前提を共有せずには、ウォン・カーウァイとカンパニー松尾の相互性に説得力を持たせることができないので、しばしお付き合いください。

 あくまで男性が抜くことを目的とされたアダルトビデオでは、セックスシーンの前後に申し訳程度のドラマや小芝居が挿入されるのが常だが、カンパニー松尾の代表作は、いわばドキュメンタリー作品である。

 テレビ東京で放送中のドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』の監督を務める松江哲明や、銀杏BOYZの峯田和伸など、カンパニー松尾を敬愛する作家やミュージシャンは数多い。たとえば、大根仁監督は『モテキ』の中で、長澤まさみや満島ひかりといった女優たちをエロく撮るために、とにかくカメラを回し続け、自らもカメラを持って撮影するという、カンパニー松尾の「ハメ撮り」スタイルとイズムを継承したと公言している。

 そして、もともとはAVの長編シリーズだったものが、2014年に異例の劇場公開されたカンパニー松尾監督作『劇場版 テレクラキャノンボール2013』は、局地的に話題騒然となり、フジテレビのバラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』でもオマージュを捧げた企画が放送され、TBSではタイトルそのまま『TV版 芸人キャノンボール』という番組まで制作されている。

 AVの世界に叙情とポエジーと臨場感を持ち込み、カルチャーシーンにも衝撃を与え、多くのフォロワーを生んだ男、カンパニー松尾。なにもAVをそんな真剣に……と思われるかもしれないが、ことカンパニー松尾のAV作品について語るには、このくらいの真剣さと熱量でも足りないぐらいである。

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