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戦後初の11年連続甲子園。聖光学院、強さの秘密「他喜力」

7/24(月) 18:45配信

BEST TIMES

各地で夏の甲子園に向けた戦いが始まっている。注目は福島県大会。11年連続甲子園出場という偉業を目指す高校がある。聖光学院ーーその挑戦を3回にわたっておくる。第3回は「“強くなれれた”理由」。

個人主義の集まりが見つけた目標

 劇的なサヨナラ勝利で、夏の福島で戦後最長記録を更新する11連覇を決めた。
 決勝戦のスコアは5-4。春に18-3と大勝したいわき光洋の猛追を振り切っての勝利は、このひと言に尽きる。

 やっぱり、聖光学院は強かった――。

「去年のチームは自覚がある選手が多かったけど、今年の選手はバラバラ。もう、どうしようもない(笑)。でも、だからこそ面白い。『これからどんなチームになっていくんだろう』って楽しみはあるよね」

 斎藤智也監督は、夏の大会前にそう漏らした。まるで「でもね、最後にはこいつら、やるよ」と期待感をにじませるように。
 その暗示は実現した。
 監督に「バラバラ」と評されたチームが、結束力を示した背景には、選手たちが掲げたスローガンがあった。

 他喜力。

 試合で三塁ベースコーチを務める、副主将の伊達駿介が言う。

「僕たち54期生はいろんな人に迷惑をかけてきました。自分たちが『他喜力』を心がけて、お世話になったり、迷惑をかけてしまった人たちを喜んでもらえるような試合をしなくてはいけないと思っています」

 他喜力とは選手たちが導き出した造語である。その名の通り「多くの人間を喜ばせる力を出す」と表現してもいい。しかし、彼らのこれまでの道のりを踏まえれば、「他人を思い、喜ばせるために自分は何をしなければならないのか? その問いと真摯に向き合い、力を養い、発揮する」と補足することもできる。

 今年の3年生は、例年以上に「個人主義」の集まりだった。

劇薬となった「敗戦」

 下級生の頃から試合に出る選手が多く、新チームが発足してからもなかなか結束が固まらない。要するに、主力とベンチ外メンバーたちとの間に距離があったわけだ。

 斎藤監督や横山博英部長らコーチ陣もそれを見抜いていた。ミーティングを重ね、主将を固定せず、選手たちに自覚を促した。春の合宿では主力をメンバーから外すなど、チーム育成に労力を費やしてきた。それでも、春の県大会時点で斎藤監督が「まだ苦労が足りない」と再三口にしていたように、チームはまだ、成熟には至っていなかった。

 選手にとって、一番の劇薬となったのは敗戦だった。

 春の東北大会初戦で仙台育英に敗北。選手たちはミーティングでそれぞれの想いをぶつけ、そして「他喜力」にたどり着いた。

 当時の主将であり、スローガンの提案者でもある大平悠斗が言葉の意味を説く。

「監督や部長、コーチ、選手たちはもちろんですけど、聖光学院を支え、応援してくれているみなさんに喜んでもらうために、自分たちは戦わないといけないという意味を込めて。僕自身、試合に出る、出ないではなく、ベンチ入りメンバーである以上は、常に声を出したり、周りをしっかり見ながら引っ張っていったり、とにかく泥くさく。自分にとっての唯一無二の力を出し切りたいです」

 大平は背番号「5」を担うレギュラーである。主将としても、本人が言うようにグラウンドやベンチで人一倍声を出す。まさに、聖光学院の精神的支柱である。

 その大平が、東北大会後に主将を外された。斎藤監督からは「プレーヤーとしてみんなをカバーしてくれ」と配慮の言葉をかけられたが、その原因は、実は大平自身も個人主義に走っていたからだった。

「調子が上がらずに悩んでいました。本当なら、そこで人として試されていると思わなくてはいけないのに、だんだん気持ちが下がっていって……自分のことしか考えられなかった。監督に勇気ある決断をさせてしまった自分が本当に不甲斐なかったし、人としての器が小さかったというか、情けなかった」

 苦行を知る者、目的を共有する者たちの声を、大平は心に刻んだ。

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