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ロッテ・加藤、プロ5年目も「チームのために」。刺激を受けた“ライバル”たちの存在【マリーンズドキュメント】

7/24(月) 11:30配信

ベースボールチャンネル

 2012年にドラフト4位指名を受け、千葉ロッテマリーンズに入団した加藤翔平外野手。大学時代からチャンスで打席に立つことが多かったと話す加藤だが、ここぞの場面で結果を残せるようになるまでに数々の試練があった。

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■チャンスをモノにして劇的勝利の主役に

 またこの場面がきた。野球を始めた幼い頃からずっとそうだった。

 ZOZOマリンスタジアムのグラウンドに設置された電光掲示板に視線を向け、加藤翔平は打順のめぐりを考える。後半戦初戦となる7月17日のオリックス戦。1点を追う9回裏だった。

 ウィリー・モー・ペーニャが二塁打で出塁し、福浦和也が内野安打でつなぎ、大嶺翔太が四球を選ぶ。2死満塁という予感は的中した。一打逆転サヨナラをかけた打席は、自分に回ってきた。

 振り抜いた打球が左越えとなるのを見届けると、右腕を高く突き上げてグラウンドを駆け回った。ヘルメットを放り投げ、追いかけてきた仲間たちの手荒い祝福を受ける。加藤はマリーンズの劇的勝利の主役となった。

「昔からああいう場面で回ってくるんです。打てなくて負けた試合もありましたし、時には嫌だなと思った時期もあったんですけど、大学時代に『自分に回ってくるものなんだ』と思い込むようにしてからは、心の準備ができるようになりました」

 チャンスで自分に回ってこい。そう思えるようになったのは大学4年の頃だった。上武大のキャプテンとしてチームをまとめる難しさに直面していたとき、監督に「おまえはプレーでチームを引っ張っていかないといけないんだ」と語りかけられた。

 直後の大会の大一番、やはり多くのチャンスは加藤の打席に回った。「自分の失敗で負けるのは誰でも嫌だけれど、そこを乗り越えなければ成長はできない」と、物怖じする気持ちを打ち消した。次第に、緊張感も味方になっていくようだった。見事に残した結果は、チームをけん引することに直結していった。


■大学時代に三木と寮で同部屋になったことも

 マリーンズに入団して5年目を迎えた今も試行錯誤は続いている。

 誰かが出場すれば、誰かの出場機会が減り、プロであるから職を失うことにもつながる。1年目の頃、ある先輩が新人時代を振り返ったときの発言を加藤は忘れられない。「俺は新人の頃、レギュラーの先輩を潰してやろうという気持ちだった。仲が良くても、そういう思いは忘れてはいけない」。

 それでも外野手争いの壁は厚い。自分だけでなく、皆がそれぞれ戦っている。先が見えずに思い悩んだとき、心情を察したように、マリーンズのキャプテンを務める鈴木大地に言われたことがあった。

「絶対に下を向くな。もう一度、チャンスは来る」

 加藤にとって、ひとつ年上の尊敬すべき人物だった。自主トレを共にする間柄であり、時には厳しい言葉で愛ある助言をくれる。鈴木について、加藤は「あの人自身がそういう選手じゃないですか。どんな状況でもチームのために声を出して、チームのために良い場面で打つ。言葉だけでなく、プレーしている姿もすごいなと感じます」と話す。

 刺激をもらえる存在には、内野手の三木亮の名も挙がる。今季、三木が一軍の遊撃手として出場機会を増やし始めた時期、加藤は2軍にいた。彼の活躍は嬉しい反面、悔しかった。2人は上武大の先輩後輩でもあり、野球部の寮で同部屋になったこともある。

 加藤にとって、三木は初めて心から実力を認めた後輩だった。自身の転機となった大学4年、チャンスに物怖じしなくなった試合で、大きな戦力である三木は怪我により欠場していた。だからこそ、あの場面はチームのために自分が決めなければならなかった。


■プロ初打席で本塁打をマーク

 5年の月日は、人の環境を変えるには十分な時間で、プロ野球の世界であれば尚更のことだ。今年の福岡での開幕直前、若手数人と伊東勤監督の食事会の席で、加藤の顔を見た監督が冗談めかして言った。

「(マリーンズに)お前らと一緒に入ったんだ」

 伊東監督が就任した初年度、2013年のルーキーとして加藤は入団した。1月の新人合同自主トレで異例の大雪に見舞われながら、指名を受けた4人は第一歩を踏み出したのだった。

 2017年の現在、かつて横一線だった同期はそれぞれが違う位置にいる。1位指名の松永昂大は即戦力として一軍の中継ぎで登板。2位の川満寛弥は退団して地元・沖縄の社会人チームで投手を続けている。唯一の高卒入団だった3位の田村龍弘は正捕手候補の筆頭としてオールスターにも出場する飛躍を遂げた。

 そして、4位の加藤は1年目に初打席初本塁打の鮮烈デビューを飾り、フレッシュオールスターでMVPを獲得し、評価は一気に高騰した。2年目以降もずっと監督や周囲の期待を感じていたが、1軍と2軍を行き来している現状を思うと、5年目の監督のひと言を聞き流すことはできなかった。

「本当ならレギュラーとして全試合出場していないといけないけれど、今までを振り返ると、課題や反省が多くありました。監督、コーチ、いろんな人からの期待をわかっていながら応えられない自分がいて、歯がゆさはあります。それでも、キャンプの強化指定選手にしていただいたり、特打や特守を指導してもらったり、試合にも出させてもらっているので、絶対に応えないといけない。

 一軍はプレッシャーもあるけれど、観客がたくさんいるなかでプレーできるのは幸せなこと。思い切り、すべてを力に変えていかなければいけないと思います。下を向いていても仕方ない。チームが勝つために貢献していきたいです」

 3年ぶりのヒーローインタビューに選ばれた2017年の夏。混沌とする戦いは、自らの手で決着をつける。


長谷川美帆(千葉ロッテマリーンズ オフィシャルライター)

ベースボールチャンネル編集部