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火星探査機キュリオシティが「岩をレーザーで吹き飛ばす」調査は、自律制御で行われている

7/24(月) 18:50配信

WIRED.jp

米航空宇宙局(NASA)は、火星探査ローヴァー「キュリオシティ」の自律運転を試みている。適切な岩盤を探し、レーザーで吹き飛ばして組成を調査する作業を自動化するのが狙いだ。そこからは地球上でクルマを自律走行させるのとは違う、宇宙ならではの利点も見えてきた。

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地球上ではクルマが自動運転を始めたり、食品配達ロボットが歩道をうろついて危うくイヌを轢きそうになったりしているが、火星では探査ローヴァー「キュリオシティ」が、いまだに人間の遠隔操作による作業を続けている。技術的な制約もあるが、設計上の理由もある。キュリオシティが派遣された目的は科学の研究をすることであり、地球から科学者が下す命令に従う必要があるのだ。

だからといって、自動化が役に立たないというわけではない。米航空宇宙局(NASA)は2016年5月、AEGIS(イージス:Autonomous Exploration for Gathering Increased Science)と呼ばれる自律型目標設定システムの利用を開始した。これは、サンプルを採取するのに望ましい地形を、キュリオシティのカメラが自動的に検出できるようにするものだ。

2017年6月21日付けで『Science Robotics』に掲載された論文によると、同システムは周囲を観察して、適切な岩を非常に高い精度で自動的に特定できるようになったという。これは、キュリオシティの科学データ収集技術にとってだけでなく、宇宙ミッションでの自律制御というアイデアにとってもビッグニュースだ。

信号送信の待ち時間を無駄にしない

火星には、地球から非常に離れているという問題がある。キュリオシティとやり取りするには、ひとつの信号の送信に24分もかかるうえ、送信できるのは通信可能な時間帯だけだ。つまり、オペレーターが終日ローヴァーとメッセージをやり取りできるわけではない。一日の始まりに、オペレーターはキュリオシティに予定をアップロードする。そしてローヴァーは暗くなる前に移動を停止する。

この遅延があるために、キュリオシティは到着した地点の写真を送信したあとで、どの岩のサンプルを採取するかについての指示を待つことになる。つまり、貴重な科学調査の時間が無駄になっていたのだ。

AEGISプログラムを利用すれば、人間がキュリオシティを操作しなくても目標を特定できる。探しているのは岩盤だ。岩盤は形成された地点から動いていないので、サンプルには理想的なのだ。「つまり、それがつくられた背景や環境に関する何かを知ることができます。さらに、ほかの物質との関係から、その過去に関することさえわかるかもしれません」と、NASAの主任システムエンジニアを務めるレイモンド・フランシスは説明する。

AEGISは岩盤を見つけるのが得意だ。キュリオシティは、まず画像を撮影し、コンピューターヴィジョン・アルゴリズムで処理することによってコントラストのある部位を探す。「線で囲めるような尖った端を見つけることができれば、はっきり認識できる物体が見つかっている可能性が高くなります。そして火星のような環境では通常、それは岩か、何らかのまとまった地質学的特徴を見つけたことになります」とフランシスは述べる。

目標が決まると、ローヴァーの「ChemCam」装置からレーザーが数回発射されて岩の一部を吹き飛ばし、蒸発した物質の組成を分析する。この方法で、キュリオシティは火星の岩のひとつを完全に自力で見つけて調査している。しかも非常に正確にだ。93パーセントの確率で、最も望ましい物質の獲得に成功した。また、AEGISの利用が開始されてから、ChemCamによる測定は40パーセント増加している。

AEGISに関してさらに素晴らしいのが、決して強力とはいえないキュリオシティのコンピューターで動作する点だ。133MHzのRAD750プロセッサーを搭載したもので、RAMは16MBしかない。「われわれが入手した最良のコンピューターです」とフランシスは述べる。「軽量で簡素なものにして、効率の高いアルゴリズムを選択する必要があります」。公正を期すために言えば、このプロセッサーはとてつもなく頑丈で、普通のチップならフライになってしまうほどの放射による衝撃に休みなく対応しているのだから、大目に見てやってほしい。

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最終更新:7/24(月) 18:50
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