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老朽マンション、建て替えタダは都市伝説だ

7/24(月) 5:20配信

東洋経済オンライン

 四ツ谷駅から徒歩5分の一等地に建つ「四谷コーポラス」(新宿区)。1956年に日本で初めて民間企業により分譲されたマンションだ。当時はメゾネットタイプの間取りで床はフローリング、各戸に浴室が設置されるなど、時代の最先端を行く高級マンションとして注目された。

【グラフ】老朽マンションは急増(築30年以上の分譲マンション戸数推移)

■建物を大型化し51戸(現28戸)に

 ただ、最近は耐震性不足や排水管の水漏れなどのトラブルが重なり、修繕での対応が困難な状態になっていた。今年5月に所有者全員の合意で建て替えが決まった。2019年7月に完成予定の新しいマンションは、建物を大型化し51戸(現28戸)に増やす。

 同マンションに住む島田勝八郎さん(72)は、「分譲当時からの所有者が多く、建物に対する思い入れは強い。建て替え後は若い人も増えるだろうが、新旧の住民が交流できる環境を作りたい」と話す。

 建て替えに当たって1戸当たり数千万円程度の“持ち出し”は必要になるが、住民の9割が売却せず再入居を希望している。

 1棟の建物区分所有を認めた、区分所有法が制定されたのが1962年。以降、集合住宅の建設は急増した。

 築50年以上の老朽マンションは2016年末時点で4.1万戸ある。老朽予備軍を含めた築30年以上のマンションは172万戸に上る。

 東京都が1953年に分譲した日本初のマンション「宮益坂ビルディング」(渋谷区)も排水管やエレベーターなど設備の老朽化を受けて、6月に建て替え工事が始まった。建て替えが必要なマンションは今後ますます増えそうだ。

 だが、国土交通省によると、これまでに建て替えに至った例は、予定も含めて252件にとどまる。

 障害となっているのは住民の経済的負担だ。解体費や建築費は原則、区分所有者が負担する。一般的に各戸で1000万円単位の資金が必要になる。老朽マンションの住民は高齢者が多く、住宅ローンを組むことが難しい。建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要になるが、資金の捻出が難しい住民も少なくないため、合意形成のハードルが高い。

■タダで建て替えられるという都市伝説

 これまでに建て替えが実現したマンションは、容積率に余裕があり住戸数が大幅に増えるケースが多かった。新たに分譲する住戸の売却資金を建て替え費用に充てることで、住民負担を減らせるからだ。

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