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ピュアオーディオファンとDJが歓喜した伝説の名機SL-1200復活の軌跡

7/24(月) 8:50配信

週刊SPA!

 オーディオ全盛期に誕生し、ピュアオーディオファンはもちろん、世界中のDJたちに愛されたレコードプレーヤーの名機「SL-1200」シリーズ。2010年に惜しまれながら販売を終了するも、すべてを一新して蘇った。

⇒【写真】初代SL‐1200他、歴代のレコードプレーヤー

 2016年、ピュアオーディオファンとDJが歓喜するニュースが届いた。それは、パナソニックのTechnics(テクニクス)が手掛けるレコードプレイヤー「SL-1200」の復活だ。

「初代SL-1200は1972年に誕生しました。最大の特徴は、ターンテーブルにダイレクトドライブ方式を採用したことです」とは、復活劇のキーマンの一人、パナソニックの上松泰直氏。

●上松泰直氏……パナソニックAVC商品部チャンネル戦略企画課Technics担当課長。特に印象に残っているシリーズは「SL-1200LTD」

 ダイレクトドライブは、SL-1200シリーズの原点にあたる「SP-10」(1970年)に初めて搭載された。ターンテーブルが、低速回転のモーターに直接結合されており、その回転をダイレクトに感じられるのが大きな魅力だ。さらに、ゴムの消耗に伴う回転ムラや回転数の変化、ベルトの振動による雑音の解消などにも成功。起動の早さや優れた安定性も人気を博し、ダイレクトドライブ方式のターンテーブルは、登場から50年近くたっても、SL-1200シリーズに受け継がれているのだ。

「SL-1200シリーズは、デザインやボタンなどの配置をほとんど変えずに継承しています。初代からSL-1200MK2(1979年)のときに大きく改良した後は、少しずつ改良を行ってきました」

 その理由は、SL-1200シリーズが世界中のDJたちに、「楽器」として長年愛用されているからにほかならない。SL-1200は、もともとオーディオマニアに向けたピュアオーディオという位置付けで発売されたが、アメリカを中心にディスコ・クラブブームが巻き起こると、DJたちにそのスペックが注目される。SL-1200の強靭なトルクや回転ムラの少なさは、キューイング(レコード盤を戻して曲の頭出しを行うテクニック)を容易にし、振動に強いキャビネットと耐久性に優れた作りは、ディスコやクラブでの激しいプレイを可能にしたのだ。DJたちがターンテーブルに求めるニーズに、自然と応じることができたSL-1200は、ディスコ・クラブシーンにおいて、スタンダードな存在になっていった。

「この現象は、弊社が予想していないものでした。現地を視察した当時の責任者や技術設計者は、DJたちがSL-1200を楽器のように扱う姿に驚愕したようです。ただ、こうした状況を意図した使用方法とは違うと拒絶せず、むしろピュアオーディオとしての機能を保ちながら、DJたちがさらにプレイしやすいターンテーブルを開発しようと決めました。こうして誕生したのが、先述したSL-1200MK2になります」

 DJ用の側面を持つSL-1200MK2は、水晶発振器やフェダー式のコントローラー、針先にスタイラスイルミネーターなどを採用。キャビネット部分の防振構造もさらに強化され、精度の高い回転制御が行えるようになったほか、薄暗い室内でも針先が見えやすいなど、楽器としての使い勝手が大幅に向上した。こうしてヨーロッパなどでは、1979年から30年以上にわたって販売され続けた、ロングセラーモデルとなる。

◆日本のDJに向けたユースモデルが登場

 アメリカやヨーロッパで流行したディスコやクラブの文化は、日本にも影響を与えていた。70年代から90年代にかけて、若者を中心にたびたびブームが過熱するなかで、国内でもDJユースのターンテーブル需要が増加していく。そして1989年、国内向けモデルとしてSL-1200MK3」が登場した。基本的な構造は前モデルとほとんど変わらないが、内部にTechnics独自の素材を充填し、防振対策がますます強化された。さらに筐体のカラーリングが、シルバーからブラックへと変更されたのもポイントだろう。

「そしてSL-1200MK3の発売から6年、本シリーズは世界累計販売台数が200万台を突破しました。これを記念し、国内向けに5000台限定で売り出したのが『SL-1200LTD』です」

 基本的には、SL-1200MK3の筐体を踏襲しつつも、ターンテーブルやトーンアーム、アームベース部分に24金メッキを施した贅沢な作りに。シリアルナンバープレートには、限定販売を示す通し番号が刻印された。

「ただ、この刻印にはちょっとしたトラブルがありまして。当時の営業マンたちが、いろんなところでシリアルナンバーの『1』を贈ると約束してきてしまったので、調整するのが大変でした(笑)」

 ディスコ・クラブブームに後押しされ、90年代後半には、購入者の約8割がDJだったというSL-1200シリーズ。このまま栄華は続くかと思われたが、ブームが下火になり、オーディオ業界も縮小の一途をたどっていった。パナソニックは、2008年に発売したSL-1200MK6を最後に、2010年には全シリーズの販売を終了し、休止という決断を下した。

◆最新技術が盛り込まれた新生SL-1200

「愛用してくれている方がたくさんいたので、休止が決まったときは申し訳ない気持ちでいっぱいでした」と、当時を振り返る上松氏。

「いつか復活させたい」という氏の願いは、2014年に成就する。「その年の4月に、社内でSL-テクニクスブランドをリスタートさせると発表されました。休止期間は約5年くらいでしたが、ともに歩んできた身としては、もっと大きなブランクがあったと感じます」

 こうして、スタッフとファンが待望したSL-1200シリーズ復活プロジェクトは動きだした。

「SL-1200は、もともとピュアオーディオとして開発しています。そこで、オーディオマニアの方たちが、満足していただける音質と品質に徹底的にこだわろうと決めました。昔の図面をもとに、復刻版を開発する選択肢もありましたが、新しいTechnicsの商品としてアピールするなら、この機会に一から作り直したほうがいいだろうと考えました」

 多くのファンが慣れ親しんだ外見はそのままに、筐体の中には新開発したコアレス・ダイレクトドライブ・モーターや、ブルーレイディスクの制御技術など、最新のテクノロジーが惜しみなく盛り込まれた。こうして新商品の開発は進み、2016年6月にTechnics50周年を記念した「Grand Class SL-1200GAE」が限定モデルとして登場。同年9月には一般モデルのSL-1200G、さらに翌年5月には新たなスタンダードモデル「SL-1200GR」を発売した。

「SL-1200Gは素材にもこだわったので、33万円という価格になってしまいましたが、実際に音を聞いたお客様には納得していただくことができました。限定モデルは、1200台のうち300台を国内で販売しましたが、予約開始から30分で完売しています」

 価格を抑えたSL-1200GRの予約も好調で、上松氏たちの予想を超える注文がきているそうだ。

「ノイズ対策の技術が進歩し、前のモデルと比べてノイズが圧倒的に少なくなっています。古いレコードをお持ちの方は、その違いをぜひ体感してみてください」

 SL-1200がどのように新生したのか。諸兄の青春時代を彩った名曲で、試してみてほしい。

<SL-1200GR>

■希望小売価格:14万8000円(税別)■全国のオーディオ販売店で販売中■電源:AC100V50/60Hz■消費電力:11W/電源オフ時0.2W■幅×高さ×奥行き:453×173×372mm■質量:約11.5kg■カラー:シルバー■出力端子:PHONO端子×1、PHONOアース端子×1

取材・文/黒田知道 撮影/岡戸雅樹 写真/パナソニック

日刊SPA!

最終更新:7/24(月) 8:50
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