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妻は死去・1歳の息子はいまだに意識不明、相次ぐ無痛分娩事故に夫が心中告白

7/25(火) 20:00配信

週刊女性PRIME

 出産の痛みを麻酔でやわらげ、出産時やその後の疲労などを軽減する無痛分娩。

 ここ数年、神戸、京都、大阪で起こっていた無痛分娩が原因の事故が最近になり、相次いで発覚した。

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 医療事故問題に詳しい弁護士の谷直樹氏は、

「表に出てこないだけで、事故は起きています。以前から事故の報道がされていて、リスクや危険性の認識があれば、医師側も注意深くなったでしょうし、妊婦も慎重になり、新たな事故が防げたかもしれない。問題を隠すとうずもれてしまい、また繰り返す」

 と表面化しないことのリスクを指摘。無痛分娩について、

「無痛分娩にもルールはあり、ルールを守り手順を踏めば安全なはずです。ルールを守らない、守れない医師が同じような事故を起こしている」

 と、経験や勘に頼りすぎる医師のスキルを疑問視する。

 無痛分娩にはいくつかの方法があるが、そのひとつが硬膜外麻酔(下の図参照)。脊髄の近くに薬を投与し、痛みを和らげる方法だ。気をつけなければいけないのは硬膜を破り、その奥のくも膜下に針が到達したときだ。くも膜下腔に麻酔が誤注入されると効きが強すぎて、妊婦は急速に意識をなくし、処置が遅れれば呼吸停止、心停止に至る。

 前出の谷弁護士は訴える。

「くも膜下腔に麻酔薬が入っても、異変に気づきその後の注入を止めれば、全身脊椎麻酔になることはまずない。ただ、観察しなければ異変に気づけない」

 実は事故の多くがこの観察を怠った結果、発生している。

 麻酔を使った出産方法だが、「無痛分娩には、ガイドラインなど統一したものは現在整っておりません」と明かすのは日本産科麻酔学会の担当者。さらに、

「ガイドラインは早急に議論し、作る必要があります。ほかにも産科麻酔の専門医の資格化についても話し合い、安全性の確立や体制を整備しなければならないと思います」

 と今後の取り組みを明かす。

 兵庫県姫路市の産婦人科『オカ・レディースクリニック』は積極的に無痛分娩をすすめていない。岡憲史院長は、

「やり方のコンセンサスが取れていない。カテーテルの本数も使う麻酔も、現状は病院によってまちまち。ひと言でいえば混沌としている状態」

 と、医療の現状のバラツキを指摘。その混沌の犠牲になるのが、妊婦であり赤ちゃんであり、その家族だ。

 東京在住の広川大輔さん(32・仮名)は、2015年9月2日、無痛分娩事故に見舞われた。硬膜外麻酔の誤注入により妻・美樹さん(当時33・仮名)は重大な後遺障害を負い、意識を取り戻すことなく今年5月12日に死去。緊急帝王切開で生まれた息子も脳に重い障害を負い、1歳となった現在も意識のないまま入院生活を送っている。

 美樹さんは実家のある神戸市で里帰り出産を望んだ。決めたのは家からいちばん近い『おかざきマタニティクリニック』。

 ただし、夫妻は最初から無痛分娩を望んでいたわけではない。美樹さんは身長150センチ強と小柄。赤ちゃんは3500グラム弱と大きめで「お産に時間がかかり大変」と院長医師からの提案があったからだ。

「美樹も医師を信頼していた。あのとき反対していたら」

 と、後悔をにじませるのは美樹さんの姉・咲子さん(仮名)。医師に促されるまま無痛分娩で出産が決まった。

 陣痛が始まったのは出産前日の9月1日。翌朝、まず試験的に少量の麻酔を投入するテストドーズが行われた。ここで医師は美樹さんを残し、外来に。異変はすぐに現れる。

「私が突然呼ばれて“足がしびれて自分では動けないから車イスに乗せてほしい”と言われました」(前出・大輔さん)

 実は、このしびれは兆候だった。美樹さんのカテーテルはくも膜下にまで達していたが、医師も看護師もそれを疑うことなく本番の麻酔を投入。医師は再び外来へと戻った直後に美樹さんの容体が急変。気分不良、嘔吐、さらには子どもの心音も下がりだした。

「看護師も慌てだし、何が起きているのか私にはわからず、医師がやっと戻ってきたら、そのうちに救急隊が到着し、搬送されることになりました。妻の意識はなく、大学病院に着いたときには、母子ともに心肺停止でした」(大輔さん)

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最終更新:7/25(火) 20:00
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