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PET検査を活用したアルツハイマー病への新たなアプローチ

7/25(火) 20:36配信

ニューズウィーク日本版

<PET(陽電子断層撮影法)検査をはじめとする画像診断技術の進歩により、アルツハイマー病による軽度認知症(MCT)の発見が可能となりつつある>

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は、認知症を引き起こすもののうち、もっとも多い疾患。また、その原因のひとつとして、脳神経細胞の老廃物であるタンパク質「βアミロイド」があげられており、これが脳の中に徐々に蓄積し、正常な神経細胞を変化させることで、脳の働きを低下させたり、脳萎縮を進行させるといわれている。

従来、アルツハイマー病の診断には、記憶障害や判断能力の低下などの典型的な症状と記憶力検査でほぼ足りるとされてきた。しかし、近年、PET(陽電子断層撮影法)をはじめとする画像診断技術の進歩により、アルツハイマー病による軽度認知症(MCT)の発見が可能となりつつある。

【参考記事】「チョコレートは、あなたの脳力をブーストする」との研究結果

早い段階でアルツハイマー病による認知症を発見できる

2017年7月に開催された国際アルツハイマー病会議(AAIC 2017)では、2016年から4年間の予定で実施されている研究プロジェクト「IDEAS STUDY」の中間成果が報告された。

「IDEAS STUDY」とは、臨床的有用性が不確実であることから米国のメディケア(高齢者および障がい者向け公的医療保険)や民間保険で適用外となっている「βアミロイド」の画像化の有用性を評価するべく、65歳以上の軽度認知症または認知症のメディケア受益者18,000万人を対象に、PETによる「βアミロイド」の画像検査を実施するというものだ。





「IDEAS STUDY」では、これまでに、65歳から95歳までの3,979人を対象に、PETによる「βアミロイド」の画像検査を実施し、検査前と検査から90日後における医学的管理の変化を検証した。これら被験者のうち64.4%が軽度認知症で、35.6%は認知症の基準と合致。また、検査前には、認識機能障害の主な原因として、アルツハイマー病が疑われていた。

PETによる検査では、軽度認知症患者の54.3%、認知症患者の70.5%が「βアミロイド」の陽性と判明。この検査結果をふまえ、軽度認知症患者の67.8%、認知症患者の65.9%において、薬物療法やカウンセリングなど、医学的管理に何らかの変更がなされたという。

アルツハイマー病への新たなアプローチ

この中間成果は、PETによる「βアミロイド」の画像検査が、アルツハイマー病の治療に少なからず影響を及ぼしうることを示すものといえよう。

「IDEAS STUDY」の主席研究者でもある米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のジル・ラビノビッチ博士は「当初の仮説では、PETによる「βアミロイド」の画像検査により、30%程度の症例において医学的管理が変化するだろうと考えていた。しかし、今回の中間成果では、仮説と同等もしくはそれを上回る影響をもたらしうるとの結果が出た。」と評価している。

認知症を患う人は増加傾向にあり、国際アルツハイマー病協会(ADI)によると、世界全体で、認知症の人は、2015年時点の4,680万人から2030年までに7,500万人を超え、2050年には1億3,150万人に達するとみられている。とりわけ、様々な原因が複雑に作用して発症するアルツハイマー病は、その全貌がまだ解明されていないのが現状だ。「IDEAS STUDY」は、PETという最先端の画像診断技術を活用し、アルツハイマー病への新たなアプローチに挑戦している点で、注目に値するだろう。

松岡由希子

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