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松山英樹と勝者スピースの差。解決すべき最後の「HOW?」とは。

7/25(火) 11:31配信

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 全英オープン最終日。首位から7打差の5位という好位置でロイヤル・バークデールの1番ティに立った松山英樹の胸の中に一抹の不安があったことを知ったのは、彼が14位まで後退して4日間を終えた後だった。

 3番ウッドを握り、セットアップに入った松山。構えてからスイングを始動するまでの所要時間は、ほぼ毎試合、メディアとして彼のスイングを眺める私の中にも感覚的にインプットされている。クラブを握る彼の両手が動き出したとき、そのタイミングがいつもよりわずかに早いと咄嗟に感じ、心の中で小さく「あっ!」と叫んだ。

 その直後、インパクトした松山の表情が「あっ!」と叫び、同時に彼は右手で右方向を大きく指し示した。

 ボールの行方を確認する「SPOTTER(スポッター)」のアームバンドを付けた英国人男性が、すぐさま首を横に振り、「ノー。ノーチャンス!」と言った。

 第1打はアウトオブバウンズ(OB)。メジャー初優勝を目指し、猛追が期待された彼の最終ラウンドは、トリプルボギー発進となった。

「ボギーとかダボで収まっていたら……」

 その後もティショットは曲がり、アイアンショットにキレはなく、長いパットがカップに転がり込むような強運を引き寄せる気配もまるで感じられない。

 下を向いて歩く松山、ロープ内を歩く日本メディア、ロープ外を歩く日本人ギャラリー。重苦しい空気が立ち込める中、松山の巻き返しはついぞ見られず、首位とは10打も開いた14位でフィニッシュ。

 「(1番が)ボギーとかダボで収まっていたら、もう少し気合いを入れ直してという感じはあったけど、トリプルボギーにしてしまい、うまく切り替えることができなかった。パープレーに戻したい気持ちはあったが、それができなかったのは自分の技術の無さです」

 悔しさを噛み締めながら、松山はそう振り返った。

執拗な挽回力は、松山の武器だった。

 技術の無さ――世界2位を誇る本人がそう言うのだから、技術面の不足は、きっとまだまだあるのだろう。だが、バークデールの最終日の松山は技術云々より、諦めるのが早かったのではないだろうか。

 ネバーギブアップの強靭な精神力。落としても這い上がる執拗な挽回力。それは松山が身に付け、武器としてきた彼の強み、彼らしさだ。

 今年のメジャー大会だけを振り返ってみても、マスターズでは最終日に5つ伸ばして28位から11位へ急上昇。全米オープンでは「最悪です」と吐き捨てた初日の出遅れを挽回し、終わってみればメジャー自己最高位の2位となり、メジャー制覇の夢ににじり寄った。

 彼には辛抱強さが備わっている。だからこそ、厳しい練習やトレーニングを自らに強いてここまで来た。だがこの全英最終日は、トリプルボギーを喫した出だしの1ホールで彼の持ち前の粘りが消えてしまった。

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最終更新:7/25(火) 11:31
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