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【キセキの魔球01】41歳元大リーガー大家友和、ナックルボールで甦れ。

7/26(水) 17:00配信

週刊ベースボールONLINE

2017年6月19日。大家友和は現役引退を発表した。日米を股にかけて活躍した右腕だが、もしナックルボールと出合っていなければ41歳まで野球を続けることはなかっただろう。どこまでも野球と愚直に向き合った大家とキセキの魔球を巡る物語──。

必要なのは“Zen Mind(禅のこころ)”

 ナックルボールは、まさに“キセキの魔球”だ。

 それまで普通に投げ込んでいた球、つまりコンベンショナル・ピッチングの道を絶たれ、絶望の淵に立たされたとき、現役続行の最後の切り札として夢と希望をチラつかせ、微笑みかける罪深き球である。暴力的、かつ予兆不可能なその軌道と同じように、ナックルボールはどこかつかみどころがなく、それでいていつの間にか人を虜にするのだし、本気で向き合おうとすれば孤独と苦悩の闇に突き落とされる。

 そうなればまさにナックルの思うツボ。

「そう、なにかこう、生き物のような……」

 現役最後の5年間、ナックルボールの進化にすべてをかけた大家友和もそう証言している。

 北米の野球界でナックルの達人と呼ばれた人の中には、ナックルボーラーに必要なのは“Zen Mind(禅のこころ)”だと言う人がいた。ボールを握り始めたときから、体に染み込んだバックスピンの感覚を封印して、無回転のボールと向き合うのだ。豪速球でうならせていたころの昔の自分に戻りたいという煩悩にまみれるのもごく自然なことだ。その迷いを消すには一日千回ボールに触れるしかない。

 煩悩のあるうちはナックルボール自体が本物のナックルボールを投げさせてはくれない。もう過去を振り返らない自分になったとき初めて、それは“希望の球”になる。バックスピンで稼ぎ出したミリオンという年俸とはまた別の、それまで味わったことのないような野球選手としての成就と幸福感をこの無回転ボールはもたらせてくれる。現役選手としての引き際にあえてこの魔球を選び、真摯に向き合った者に、ナックルはその褒美として最高の散り方を用意してくれるだろう。

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