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2017年7月24日 沖ノ島の夢<次元上昇日記>

7/26(水) 6:01配信

幻冬舎plus

辛酸 なめ子

 「東京オリンピックに向けた壮大な取り組みが始まっています!」アナウンサーが、晴れやかな口調でテレワークについてのニュースを伝えました。新国立競技場建設現場の過酷な工事で自殺した人のいたましいニュースの後で……。何かがおかしいです。東京オリンピックに全てが一極集中しているような。全ての希望をそこにかけているような、でもそれは幻影というか、過去の様々な呪いの予兆から考えると、オリンピックを頼みの綱にするのは危険です。終わったらどうするんでしょうか?  燃え尽きるんでしょうか?  それともその後十年くらいはオリンピックの思い出に浸るのでしょうか。逃げたい……。そもそも運動全般が苦手だというのに、これから三年、オリンピック圧が高まっていくことを考えると、どこか遠いところに行きたくなります。

 本当は玄海灘の「沖ノ島」に行きたいですが、女人禁制なので行けません。海の正倉院と呼ばれ、島そのものがご神体とされています。行けないまでも、日本橋タカシマヤで藤原新也氏がこの島に上陸して撮った写真展が開かれていたので行ってまいりました。祝 世界遺産登録というフレーズが添えられています。

 展示は結構混んでいました。そして写真は全体的に緑色でした。木々の緑、苔の緑、草の緑、山の緑。鬱蒼とした空間に霊妙な気配が漂っています。写真からも霊気が伝わってきそうです。

 ちなみに「お言わず様」と言われ、島で見たものは一切しゃべってはいけない、という決まりがあったようです。しかし藤原新也氏、

 「圧倒的な巨岩が無数にひしめき合っている」「耳の形が浮き上がっている耳石は絶対に踏んではならないと言い伝えられている」

 と、島で見たものを書きまくって、写真でも撮りまくっていますが大丈夫なのでしょうか。トークイベントもされていたので、しゃべってもいます。何か神に許される儀式を行ったのでしょうか。

 しかしおかげで、島に行けない私も展示で疑似体験できたのです。古代の祭祀に使われた器などがそのまま散乱している写真を見て、これを持ち帰ったらすごいお宝に……と不埒な考えを抱いてしまいました。


 
 女人禁制の秘境といえば、奈良の大峰山です。女人結界門の直前で写真を撮影したことはありますが入る勇気はなかったです。前に入った女性が雷に打たれたとか聞いたので……。 

 ところでこの大峯奥駈道は、修験道の修行場で、迷うと幻覚を見まくるそうです。先日仕事でご一緒した、山をテーマにしている作家の方がおっしゃっていました。ここで遭難し一週間水だけでさまよっていた人が、山の中で電話ボックスとか宿泊所の幻覚を次々見て近づこうとしても近づけなかったそうです。タヌキとかキツネが化かす民話は実際あったことかもしれません。別の体験談によると、遭難している間、無の境地で不安も感じなかったとか。山で無の境地、体験してみたい気もしますが女人禁制なので、誰か代わりにユーチューバーの方とかに探検してもらいたいです。


■辛酸 なめ子
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。巫女的な感性であらゆる事象を取材しまくる驚異のフィールドワーカーとして知られる。著書は『辛酸なめ子の現代社会学』『次元上昇日記』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)、『辛酸なめ子のつぶやきデトックス』(宝島社)、『アイドル処世術』(コア新書)、『絶対霊度』(学研)など多数。

最終更新:7/26(水) 6:01
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