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喰種たちが実在したら、をこだわりぬく。 映画『東京喰種 トーキョーグール』萩原健太郎監督×桑原雅志VFXスーパーバイザー

7/26(水) 16:32配信

CGWORLD.jp

全世界累計3000万部超という桁外れの人気コミック『東京喰種 トーキョーグール』は、日本国内はもちろん、海外のファンも数多く、北米市場においては『NARUTO』や『進撃の巨人』に並ぶヒット作と言われている。同タイトルのアニメ化や舞台化を経て、今回の実写映画化に対する期待感とプレッシャーは、まさにワールドワイドなものとして並大抵ではなかったはずだ。
そこで興味深いのが、初の長編監督作となる萩原健太郎氏の大抜擢だ。CMディレクターを生業とし、数々のPV、MV、ショートムービーを演出してきた俊英は、同じ映像表現でありながら、テレビドラマやアニメ、さらには従来の映画ともちがうテイストをもたらし、本作に新しい風を吹き込む。そして、原作の世界観をリアルなものとして実現したのが、同じくCM業界を主戦場とするVFXスーパーバイザーの桑原雅志氏(ビジュアルマントウキョー)の仕事だ。今回のプロジェクトがいかに革新的だったのかを両者に聞いた。

<1>観たことのない映画をつくるという挑戦

ーー萩原監督の下に企画が舞い込んできたとき、どこまで進んでいたのでしょうか?

萩原健太郎監督(以下、萩原):脚本の初稿がほぼ仕上がってという段階でした。ラインプロデューサーが決まったところでしたね、僕に話が来たときは。2016年2月の終わりぐらいかな。4ヶ月ぐらいしか準備期間がなかったです。

ーー初めての長編でこれほどの大役を任されて、どんな気持ちでしたか。

萩原:映画はずっとやりたくて、オリジナルの企画を何年も進めてたんです。でも何回も頓挫して、どうしたら映画にたどり着けるんだろうと思っていたときにいただいた話だったので、正直ビックリしました。けど、単純にうれしかったですよね。

ーーまず最初に脚本を読まれた感じですか。

萩原:脚本を読む前に、こういう話があるんだけどって制作会社のプロデューサーさんからお話をいただいて。原作を読んでみたらものすごく面白いし、とても有名だというのもそのときに知って。普段全然マンガとか読まないんですけど、これはぜひやりたいなと。

ーーVFXを駆使するタイプの作品ですが、どこから手をつけようと考えましたか?

萩原:最初に考えたのはテーマですね。もちろん原作で描かれることはいろいろありますけど、どんどん変わってくるじゃないですか。その中で、映画的にどういうものを中心にして描いたらいいのかを1ヶ月ぐらいずっと考えました。

ーーその中でつかんだものとはなんですか?

萩原:「見る」ということをテーマに描こうと。見るって知ることだと思うんです。でも、目で見ているものの本質を捉えられているかどうかって難しい問題で、それに気づかずにいることの方が多いですよね。僕、アメリカに7年ぐらいいましたけど、例えば、黒人が前から歩いて来たら避けてしまう。そういうものがアメリカだと問題意識としてあるんですけど、日本人って人種差別的なものに疎いし、偏見みたいなものをあまり意識していない。

ーーいわば現実との向き合い方を抽出したと。

萩原:カネキ(金木 研:窪田正孝)くんをそういう一般的な、東京に住んでる若い日本人の大学生として捉えて、「見る」っていうことを描いていきたい。だから(映画は)目から始めてるんですよね。トップカットの目って、実はハイライトとか全部消して何にも映り込んでないんです。

桑原雅志VFXスーパーバイザー(以下、桑原):監督から映り込みを消してって言われたんですが、ハイライトを消すと目っぽくならないので、いいのかなあと。それでなぜ消すんですかって聞いたら、「カネキは喰種(グール)になる前はやる気がないっていうか、あえて生気のない目にしたかった」という説明を受けて、改めて監督の目のクローズアップに対する表現への考えに納得できました。

萩原:要は本質が見えてない。本の世界だけで生きてきた子なんで、友だちもひとりしかいないし、どこかおかしい。

ーー最初はものすごく弱い存在じゃないですか。これで主人公なのかってところから始まる。

萩原:カネキくんって自分から行動しないんですよ。あるところまでずっと受け身で。客観的に物事を見ているというか、人と関わっているようで関わってない。そこからヒーローとして立ち上がる話にしたいとは思ってました。

ーーところで、VFXチームはどのタイミングから制作に参加していたのですか?

桑原:けっこう初期ですね。わりと監督と同時か、ちょっと後ぐらいです。

萩原:撮影前に雛形というか、特殊造形で赫子(カグネ)(※1)やクインケ(※2)を全部つくってもらったんですけど、それを元にして――。

※1 赫子:喰種の捕食器官。体内より放出された「Rc細胞」を自在に動かすことで、捕食だけでなく攻撃にも使用される

※2 クインケ:喰種に対抗するために、CCG(Commission of Counter Ghoul)が開発した武器。捕獲した喰種から摘出した赫包を加工したものであり、普段はCCG捜査官のアタッシュケースに収納されている

桑原:赫子ってどうしようかみたいな、美術打ち合わせ的なところからがスタートでした。基本は赫子とクインケ、赫眼(カクガン)(※3)ですね。

※3 赫眼:喰種は、人間を捕食する際やCCG捜査官との戦闘時に目が赤く変化する。ちなみにカネキは人間から半喰種となったため、片目だけが赤くなり、その衝動をコントロールすることができないため日常生活では眼帯を着用している

ーー具体的にどのように進められたんですか。

萩原:まずはデザインですよね。

桑原:一連のVFX表現について、今回はコンセプトアートを描くといったデザインから担当させていただきました。マンガとかアニメを観て全体的な形状は把握できたのですが、質感などの詳細まではわからない。今回VFXの役割として赫子をリアルにするのが一番のテーマでしたので最初は悩みましたね。例えば僕に赫子を付けたところを想像してもどう見てもCGにしか見えない。それをどうリアルに落とし込んでいくのか(実在感をもたせるのか)と。まずは僕なりのVFXの基本としての考え方で自然界にある物をリファレンスにし一度は見たことあるような質感を取り入れていくことにしたんです。見たことない質感にしてしまったらそこでCGってなっちゃいますからね。

ーーなるほど。

桑原:カネキの赫子の場合は、トカゲの皮膚のような質感を。一方、トーカ(霧嶋薫香:清水富美加)は瘡蓋(かさぶた)的なニュアンスを込めるといった具合に、まずは各喰種たちの赫子の特性をくみとり、徐々にデザインへと落とし込んでいきました。それを踏まえてテストモデリングを進める中で、具体的なビジュアルとして監督に提案していきました。撮影前にはデザインを固めることができたので、そこからキーとなるバトルシーンのプリビズを作成し、動きとデザインのバランスの検証を行いました。それらのデータは撮影時にスタッフや役者さんとのイメージ共有ツールとしてとても役立ちましたね。だって赫子の大きさや喰種のアクロバティックなアクションは、文字や言葉だけではとうてい想像できませんからね(笑)。

ーー監督の方からVFXチームに作品の方向性などは、どのように伝えていからたのですか?

萩原:観た人の印象として、「気持ち悪さ7:美しさ3」みたいな、それぐらいの割合で感じるものにしたいということを話しました。

桑原:それがデザインをするにあたって一番の軸のテーマとしてありました。

ーー実際に作品を拝見して、それは映画全体にも通じるものだと思いました。

萩原:そうですね。カネキくんが偏見の的として見ていた喰種を、最初は気持ち悪く見せたい。けれどもカネキくんが喰種のことを知っていく過程で、赫子も美しくみえるようにしたいっていう考えがありました。虫って気持ち悪い存在だけど、ハエの目にすごく寄ってみたら綺麗みたいな。それもさっき言った「見る」ということとつながるところなんですが、そんな話を最初にしましたね。

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最終更新:7/26(水) 16:32
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