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人材への投資とこども保険

7/26(水) 9:08配信

NRI研究員の時事解説

<要旨>

今年の「骨太の方針」の柱の一つとなったのは、「人材への投資」であり、幼児教育・保育の早期無償化など、教育分野への投資を手厚くする方針が明記された。「受益者」と「負担者」の一致、国債発行残高が既に未曽有の高水準に達していることなどを踏まえると、同政策実施のために財政効率化でねん出できない分は、(1)年金から控除する形で年金世代にも負担を求める「こども保険」の創設、あるいは(2)「こども保険」と、全ての現役世代が負担する「消費増税」の適切な組み合わせを財源とするのが妥当なのではないか。さらに、誰がそれを負担するのが妥当であるか?の議論に加えて、それを如何に使うことが、日本経済の活性化といった本来の目的に最も適うのか等、「使い方」の議論もさらに深めていく必要があるだろう。

「人材への投資」の内容と目的は多様

先般閣議決定された「骨太の方針(2017年)」は、来年度予算編成などに向けた経済財政運営の基本指針となる。今年の「骨太の方針」の柱の一つとなったのは、「人材への投資」であり、幼児教育・保育の早期無償化や大学進学の後押しなど、教育分野への投資を手厚くする方針が明記された。日本経済を活性化させ、国民の生活向上を実現するには生産性上昇率、労働力強化を通じた潜在成長率の引き上げ等は欠かせない。その際に、教育費の軽減や教育水準の引き上げが重要であることは疑いがないところである。

しかしこの「人材への投資」の内容、その目的は多様であり複雑である。「待機児童の解消」は、以前より政府の目標としながらも達成できなかった課題への対応であるが、その目的は、(1)児童を持つ女性の就労を助ける労働供給拡大と、(2)出生率の向上を通じた将来の労働供給拡大である。これは、潜在成長率の成長会計の考え方(注1)によると、現在及び将来の労働供給を拡大させることを通じて潜在成長率の上昇を目指す措置と整理できる。他方で、「幼児教育・保育の早期無償化」は、養育費用の負担を軽減することで出生率を向上させ、将来の労働供給拡大を通じて潜在成長率の上昇を目指す措置である。

他方で、「大学進学の後押しと大学教育の質向上」という高等教育の改善も掲げられている。これは、労働と資本ではない技術進歩部分(TFP:Total Factor Productivity:全要素生産性)の成長寄与を高めることで、潜在成長率の上昇を目指す措置と整理できるだろう。ここでは、労働の成長寄与向上を通じた潜在成長率の引き上げ策と、TFP(全要素生産性)の成長寄与向上を通じた潜在成長率の引き上げ策とが混在しているのである。

こうした点を丁寧に整理して説明しないと、政策の財源に関する国民の理解が得られにくいように思われる。

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