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政府は財政健全化シナリオの「粉飾」をいつまで続けるのか

7/26(水) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 内閣府から、「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期財政試算)が公表された。だが財政健全化シナリオの前提になる成長率や税収の見積もりは現実離れしたもので、「いつまで、こんなフィクションを繰り返すのだろうか」というのが正直な感想である。

● 過大な税収見積もり それでも「2020年度黒字化」は不可能

 安倍政権が定める財政目標である、「2020年度基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化」は、首相自身がG7サミットの場などでコミットしている。

 つまり国債発行は、国債の償還や利払い費の範囲に抑え、社会保障や防衛費といった政策的な経費は税収で賄えるよう収支を黒字化することは国際公約となっている。

 中長期財政試算は、その目標に向けての進捗状況を示すもので、達成に向けての経済政策・財政政策を経済財政諮問会議で議論するために内閣府が作成したものである。

 だがその前提となる経済成長率は「実質2%以上、名目3%以上」(経済再生シナリオのケース)と楽観的過ぎる内容で、これを前提に計算した税収(歳入)も過大見積もりとなり、プライマリー黒字に必要な所要金額は過小見積もりになっている。

 これまで2回先送りした消費税率10%への引き上げは2019年10月には実施することにもなっているが、それでも2020年度のプライマリー黒字には、なお8.2兆円不足するという試算だ。

 これで国際公約の達成は不可能ということが明確になった。

 そのことを見込んで、政府が、プライマリーバランス黒字化に加えて、財政健全化の新目標に「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」を入れ込んで、今後の目標達成のハードルを意図的に引き下げたことは、2017年6月8日の本欄「財政健全化『新目標』は数字のまやかし、再建は遠のきかねない」で指摘したところである。

 より大きな問題は、試算の結果に、官邸や経済財政諮問会議、財務省が苦渋を感じている風でもなく、さらにはマスコミも驚きや怒りや問題意識を発していないように見えることだ。

 もはや「アベノミクス」は国民からの信頼を失っており、強く反論・批判する気力もなくなっているということなのだろうか。これが今日の日本の経済・財政政策を巡る状況、構図である。

● 16年度、税収は軒並みマイナス リフレ派の主張の間違い明らかに

 筆者がとりわけ問題にしたいのは、平成28年度(2016年度)決算での税収額である。

 これを見ると、所得税、法人税、消費税の3税(これで税収の8割強を占める)、すべて前年度決算額より減少し、一般会計全体では0.8兆円の減となっている。

 これは7年ぶり(リーマンショック時以来)のことだ。

 2016年度の名目経済成長率は1.1%なので、いわゆる税収弾性値はマイナスになった。かつてリフレ派が、成長によって税収が増え財政健全化も達成できると主張、「経済回復期には税収弾性値は3とか4になる」と言っていたが、それが間違いであったことが検証された。

 政府の説明では、法人税収の減収は、円高による企業業績の落ち込みによるもので、消費税収も円高による輸入額(円換算)の減少、所得税収は配当などの落ち込みによると、それぞれに一応の理由があげられているようだが、根本的な要因は、アベノミクスの下で国民の所得・消費が順調に伸びていないことだ。そのことを税収は、ほかのどの経済指標より正直に物語っている。

 ちなみに、「円高で輸入額が目減りしそれが消費税収の落ち込みにつながった」という解説がされているが、消費税が仕入れ税額控除制度をとっていることからすると間違いだ。円高で仕入れ(輸入)価格が安くなれば、国内販売段階で控除できる消費税額が少なくなり、国内販売者の消費税納税額はその分増えるからである。

 消費税減収の真の原因を説明するなら、国内消費の落ち込みでなければならない。

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