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1万人以上と面談した産業医が指摘!上司が知るべき正しい「ほめる技術」とは?

7/26(水) 15:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 これまで1万人以上を面談した産業医の武神健之です。産業医として10年間の経験から、メンタル不調者が出ない組織の上長が共通して持っている「みる技術」、「きく技術」、「はなす技術」についてこれまで書かせていただきました。

⇒【資料】ほめどころピラミッド

 人の生産性というのは安心できる環境、安全でポジティヴな環境のなかで伸び発揮されます。反対にネガティヴな感情が渦巻いているようなところでは人の生産性や能力は伸びませんし、結果も期待できません。

 ほめるから生産性が上がるのか、生産性が上がるからほめるのか、どちらが先かはわかりません。ただ、メンタル不調者が出ない組織の上長は、部下をよくほめています。その結果チーム内にもほめ合う文化があります。そしてそのチームには常にポジティヴな雰囲気(環境)があり、結果が出ています。

 今回はメンタル不調者が出ない組織の上長が持っている「ほめる技術」についてお話しさせていただきます。

◆「ほめる」ときに意識したい2つのコツ

 ほめるというのは、相手に事実を好意をもって伝えることです。

 事実でないことを伝えた場合を、おだてる・お世辞と言います。あくまでも事実を好意を持って伝えるのが「ほめる」であり、ほめるはおだてるとは違い、ほめるに下心は不要です。

 事実を好意を持って伝える=ほめるときに大切なのは、2つのポイントを意識することです。

 1つめは、すぐにほめる・そのときにほめるということです。

 たとえば1年前のことをほめられても、誰もあまり嬉しくないでしょう。どうせほめるなら、そのときにほめて欲しかったと思われてしまいます。

 2つめは、ほめるときは、ワンパターンな言葉ではなく具体的にほめることも大事です。

 いつも「ありがとう!」「すごい!すばらしい!」ばかりでは、何を本当にほめているのかよくわかりません。きっとあなたの職場にもワンパターンな言葉でほめる上司がいると思います。そのひとのほめ言葉に、重みはありますか?

 人がほめられて本当に嬉しいのは、そのほめられる内容に納得感があるときです。

「○○をしてくれたのがよかった」、「○○をしてくれて嬉しかった」と、ほめる理由を具体的に伝えましょう。それができていれば、色々な言葉でほめるというポイントも押さえられます。

 このように、具体的な事実を好意をもってすぐに伝えるという「ほめる技術」が、結局のところ、相手との間にいい関係性を築き、職場の雰囲気をよくしています。当然、メンタルヘルス不調になる人は少ない環境が形成されています。これが「ほめる技術」をもつ上長ができていることなのです。

 私が管理職研修でこのような話をすると、たまに「でも、私の部下にはほめるところが見つからないんですが、どうやってほめたらいいんですか?」と質問されることがあります。

 大丈夫、ほめるところはあります。相手のほめるところを作るために、ほめる技術の基礎となる「ほめどころピラミッド」をご紹介します。

◆ほめるところがない部下はどうする?

 では、今ほめるところが見つからない相手をほめるためには、どうしたらいいのでしょうか。それは、まずは、ほめるところを見つけることです。

 そこで使えるのが、「ほめどころピラミッド」です。

 これは一番下の階層の「環境をほめる」から始まって、一番上の「存在をほめる」まで、ほめる技術を段階的に表したものです。

 たとえば、「ネクタイがおしゃれだね」「机がいつも整頓されていていいね」「小洒落た服装だね」などは一番下の「環境をほめる」にあたります。

 次の段、「行動をほめる」です。結果ではなくとりあえず行動をほめます。

 その次、「能力をほめる」、これも結果ではありません。

 それから「考え方をほめる」、そして最上段として「存在をほめる」というふうになります。

 ピラミッドの上にいくほど、ほめられるほうは嬉しいですが、ほめるほうも何か特別なことがないとほめるのが難しくなります。でも、下のほうは割と簡単に見つけられるのではないでしょうか。

◆具体的にほめてみましょう

 いくつか具体例をあげてみましょう。

「A社に行くときは新調したスーツでビシッと決めていったもんね。それが決め手になったかもね。さすがだよ」

 これはピラミッドの最下段、環境をほめています。

「何度も何度も営業の電話をかけてくれていたよね。そういうことができるのはあなたしかいないね」

 と、行動をほめることができます。

「あの取引先の担当者相手に大変だけれども君の忍耐力はさすがだね」

「クライアントさんといい関係を築けたのは、○○くんの人間関係構築力がすごいからだと思うよ」

 というのは、能力をほめていることになります。

「これだけがんばれたのは、お客様のためになりたいという気持ちと自分を成長させたい向上心があったからだと思うよ!」

 と言って、考え方をほめることもできるでしょう。

 そして、

「○○君と一緒に働けることを誇りに思うよ」

「○○君がいるから、この部署が元気になっていると思うわ!」

「あなたの存在がチームにいい影響を与えてくれています」

 これらは相手の存在そのものをほめる、ピラミッドの最上段のほめ言葉です。きっとあなたも、こういわれたら嬉しいのではないでしょうか。

◆ほめるためには、みる技術

 こうやって考えていくと、ほめるところはいろいろとあるものだと思いませんか?部下のほめるところがないと言う管理職は、もしかすると、ご自身が部下をしっかりみていなかったから、ほめるところがみえていなかっただけなのかもしれません。

 部下をほめることによって部下の自己肯定感が高まり、やる気が上がります。部下たちをほめることによって、部署の自己肯定感が高まり、士気が上がります。

 あなたも具体的に、ほめる言葉を気になる部下や行動の変化を求めたい人に、どのレベルでもよいので探してみてください。それだけで、あなたの「みる技術」がかわります。

 そして実際に相手にほめ言葉を伝えてみて、うまくいったなと思った場合は次にはほめどころピラミッドの一段上のほめどころを探してみてください。

 そうやって相手とのいい関係を構築できれば、今後は相手は自発的にあなたの期待に応えようとしてくれるかもしれません。

◆それでもダメなら「ありがとう」

 ここまでのことが頭では理解できたとしても、やっぱりまだ相手のほめるところが見つからないという場合は、「ありがとう」という言葉を伝えましょう。

 それは相手とのいい関係性を構築するための最初の一歩となるはずです。ぜひ、今日から試してみてください。

<TEXT/武神健之>

【武神健之】

たけがみ けんじ◯医学博士、産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書―上司のための「みる・きく・はなす」技術 』(きずな出版)、『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある

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最終更新:7/26(水) 15:53
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