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失敗、挫折……あらゆる経験を生かせるのが人材ビジネス 営業からの叩き上げトップとして日本法人でグループの先頭に立つ~マンパワーグループ株式会社 代表取締役社長 池田 匡弥さん(後編)

7/27(木) 7:30配信

日本の人事部

マンパワーは世界でも日本でも、人材派遣サービスの代名詞と言えるほどの歴史とブランド力を持つ企業。グローバルカンパニーらしく、これまでの日本法人の歴代トップはアメリカ人か、社長候補としてスカウトされたキャリアのあるビジネスパーソンが務めてきました。しかし、2014年に社長に就任した池田匡弥さんは、中途採用で入社し、一営業職からの叩き上げで抜擢された、同社としてはかなり異色の経歴を持つリーダー。池田さんは同社を人材派遣会社から、多彩なHRソリューションをフルラインアップで提供する総合人材サービス企業へと大きく変えつつあります。インタビューでは、運命的ともいえるマンパワーとの出合いや日米両国で取り組んだ人材ビジネスへの熱い思い、さらには経営者として大切にしている座右の銘、現在の人材サービス市場の分析や人材業界で働く若い方々へのメッセージまで、多岐にわたってお話をうかがいました。
(前編より続く)

マンパワーは「HRソリューションのすべて」をフルサービスで提供していく

―― 帰国後は経営陣に加わり、2012年に副社長、2014年には代表取締役社長に就任されました。

一営業担当からこの会社や業界で汗をかいてきたこと、会社についても社員についても熟知していることを評価してもらえたのかなと思っています。一営業担当からの生え抜きの日本法人トップは、おそらく私が初めてでしょう。歴代社長の多くはアメリカ人でしたし、日本人の場合でも社長候補としてスカウトされた人がほとんどでした。

―― 現在のマンパワーグループはどのような会社ですか。

皆さん、マンパワーというと「人材派遣の草分け、老舗企業」というイメージが強いと思います。実際、日本で最も早く人材派遣サービスを提供した企業であり、リーマンショック前までは人材派遣の売上が90%以上を占めていました。しかし、現在はずいぶん変わってきています。一言でいえば、企業が求めるHRソリューションをフルラインアップで提供できる会社、「HRソリューションプロバイダー」をめざして多角化を進めています。これは世界的なグループの経営戦略に基づくもので、その変化のスピードがいちばん速いのが、実は日本なのです。

―― 大きな戦略の転換だと思いますが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

リーマンショックが大きかったと思います。企業が抱えるHRの課題はきわめて多岐にわたります。人材派遣だけでは、ソリューションとしては不十分だということです。「人材採用・ソーシング」「育成・能力開発」「最適化」「評価・選抜」など、幅広い課題にワンストップで対応できることが、今後は大きなアドバンテージになると思います。

それぞれのサービスでブランド展開を進めていて、日本には四つのブランドがあります。「マンパワー」は派遣、人材紹介で事務系・軽作業系が中心。「エクスペリス」は技術・エンジニアリング系の派遣・アウトソーシングを主体に。「ライトマネジメント」は人事組織コンサルティング、アウトプレースメント(再就職支援)といったキャリアに関するソリューションを、「マンパワーグループソリューション」はアウトソーシング、採用代行といった請負型サービスで展開しています。人材派遣のイメージが強かったマンパワーですが、今後はこれらのブランドを広く浸透させて、新しいマンパワーグループをつくりあげていくことが目標となっています。

―― 新しいイメージづくりにはどのように取り組まれているのでしょうか。

ワールドワイドでは“We power the world of work”という企業理念を掲げています。「我々は働く世界に力を与えます」という意味です。昨今、人工知能(AI)の活用をはじめ第四次産業革命ということが叫ばれています。たしかに、人でなくてもできる仕事は、AIやロボットに置き換えられていくでしょう。しかし、たとえどんな時代が来ても、中核を担うのはあくまでも人だと私たちは考えます。AIを開発するのも使うのも人だし、最終的に世界をつくるのも人。マンパワーはどこまでも、その「人」をサポートする仕事をしていくという意味です。

日本では、もっと具体的に「求職者の目線に立とう」と言っています。現在の人材マーケットは売り手市場。需要が多く、供給は少ない状況です。求職者が望むことにしっかり対応していかないと、顧客にサービスを提供できません。そういうメッセージを全社員に送っています。サービスプロセスを一つひとつ見直して、派遣でも紹介でも求職者の目線ですべてを考えていく。細かいところから取り組んでいく、ということですね。

―― 多角化を強力に推進されているわけですが、その中でも現状で特に力を入れていらっしゃる分野をお教えください。

三つあります。一つ目は「人材紹介」の強化。具体的には、リテーナー(着手金)方式のヘッドハンティング会社やエグゼクティブサーチの会社を立ち上げました。また、人材派遣と同じフィールドでも、人材紹介チームをつくりました。この分野はまだまだ伸ばしていけると考えています。

二つ目は「地方」への注力。人材はどうしても大都市圏に集中します。そのため、本当の意味で困っているのは、人材の絶対数が少ない、地方に拠点を置く企業なのです。そういう企業にはなかなか紹介できず、効率も良くないため、多くの人材エージェントもリーチしていないのが現状です。私たちはそこにフォーカスしていきたいと考えています。そのベースとなるのは、マンパワーの全国40都道府県を網羅する拠点ネットワークです。このインフラを活用して、地方をどんどん活性化していきたいと思います。

三つ目は「採用代行」を中心とするアウトソーシング分野。企業からは、人材供給から一歩踏み込んですべての業務を代行してほしい、という要望が強くなっています。

―― そういった分野の売上比率はどれくらいまで伸びているのでしょうか。

現状では人材派遣の割合が約70%ですから、それ以外の分野をすべてあわせても30%でしょうか。ただ、リーマンショック以前は10%にも満たなかったことを考えれば、着実に伸びています。私たちが一から事業をつくって伸ばしていくだけでは限界がありますので、今後はワールドワイドでのM&A戦略もより重要になると思います。

―― 組織をけん引する経営者として大切にされていることをお教えいただけますか。

私がリーダーとして大きく影響を受けているのは、山本五十六です。彼のことを書いた本はたくさん読みました。その中でもいちばん心に残っているのが、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉です。リーダーは自分が先頭に立って、やってみせることが大切。このフレーズを自ら体現していこうといつも考えています。

私がいつも後輩たちに言っているのが、「数をこなす営業には誰もかなわない」ということ。これは私の信念なんです。出会いがすぐビジネスに結びつく可能性はごくわずか。その確率を上げるのは難しいことですが、数は努力で上げられます。そして、どんなに器用で営業の才能がある人でも、数をこなす営業には最終的にはかなわない。社長業は正直忙しくて、多くの人に会う時間を捻出することは、そう簡単ではありません。それでも、取引先以外に経営者の交流会、金融機関の集まり、大学の同窓会など、チャンスがあれば顔を出して、何かあればトップセールスにもっていく。常に現場の感覚を忘れずにいることも大切だと思っています。

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最終更新:7/27(木) 7:30
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