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「人の心に棲め」本田宗一郎は究極の顧客志向

7/27(木) 11:39配信

日経BizGate

マーケットイン思考のわな

 プロダクトアウトはいけない、マーケットインでなくては、とよくいわれる。確かに、自分たちで作れる製品は何かを中心に考えてしまって、ニーズがあるかどうかをついつい軽視してしまうのは、多くの企業で起こる現象であろう。それへの警鐘として、「プロダクトアウトはいけない」という部分は正しい。しかし、それを是正しようとするスタンスを、マーケットインという言葉で表現していいのか。

 私は疑問を感じる。マーケットインという言葉は、組織の中に様々な歪んだ力学を生み出し、結果としてイノベーションにつながるような開発になりにくい危険が大きいからである。したがって、マーケットインのウソ、ということになる。

 微妙な言葉の違いだが、マコトは「顧客イン」というスタンスだと思う。顧客インとは、真に顧客の立場になって、ニーズもウォンツも深く考える、ということである。顧客のために考えるというのではまだ不十分で、顧客になり切って徹底的にそのニーズを考えるのである。顧客の考えそうなことを自らの頭と体にしっかり入れる、という意味で、顧客インという言葉を使っている。

 本田宗一郎さんは、顧客インと同じ意味のことを、「人の心に棲んでみよ」と言った。単に人の心を想像するのではない。心に棲むという強い表現に彼の真意がうかがえる。

 マーケットインで考えよ、と言われると、みんなすぐにマーケットの現状を調べる。そのために市場調査をする。その結果、2つのことがわかるだろう。1つは、実際の売り上げはどのような製品に向かっているか、という実態である。もう1つは、競争相手がどんな行動をとっているか、という実態である。

 いずれの情報も、手に入れた方がいい情報である。しかし問題は、そういう情報が手に入ると、その先をさらに深く考えようとしなくなることである。あるいは、その情報に過剰に反応することである。

 先を深く考えなくなる危険とは、実際の売り上げ動向がわかるとそれに反応してしまい、本当の顧客ニーズはさらにその先にあるのではないか、とまでは考えなくなる危険である。

 実際の売り上げ動向によって、すでに顕在化している需要の実態はわかる。しかし、顧客の潜在的ニーズについては、市場の売り上げデータは何も語ってくれない。その潜在的ニーズは、「顧客の心に棲んでみる」ことによってしか想像できない。

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最終更新:7/27(木) 11:39
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