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なぜ日本企業はシベリアを目指さないのか?

7/27(木) 11:20配信

Wedge

 3年前のルーブル急落を機に輸入品が割高になり、ロシア国内のビジネス界では「自国でつくれるものは自国で」が共通認識となっている。筆者はシベリアの中心都市ノボシビルスクで、この典型といえそうな企業を訪ねた。

ロシア産アルミで外壁材製造

 そこは清潔で整頓された、アルミ外壁材の工場だった。

 天井の高い、ホワイト基調の広々とした空間に、オレンジ色の生産機械が数十メートルに渡ってつながっている。ロシア国内から調達したアルミ材のロールが機械で伸ばされ、表面に塗装が施されていく。塗料を乾かすための加熱と冷却、仕上げの表面処理などがすべて自動で進行する。ラインに立つスタッフは10人もいないようだ。いるのは機械を操作または監視する人で、慌ただしく動いている人は見当たらない。出来上がった外壁材パネルに、機械から伸びてきた吸盤が吸い付き、装置脇の決まったスペースに自動で重ねられていく。

 ノボシビルスクに本社を構える外壁材メーカー・SIBALUX(シバリュクス)の工場である。稼働から2年半が過ぎるが、建物も設備も、つい最近できたかのように手入れされていた。場所はノボシビルスクの空港に近い、州政府が管理する産業団地の一画だ。ここでつくった外壁材はロシア全土に出荷される。中には首都モスクワ中心部・アルバータ通りのビル改装用に納品したものもあるという。アルバータ通りは日本で言えば東京・銀座のような位置づけだ。こうした国内需要のほか、モンゴル、カザフスタン、トルクメニスタンなどへの輸出もある。

 SIBALUXはもともと、中国製外壁材の輸入販売業として2006年に発足した。自社生産を始めたのは2010年、同じシベリア管区内の別の州で外壁材工場のラインを借りたときからだ。材料のアルミは当初、中国から輸入していた。だがロシアもまたアルミの産地。2012年ごろからは国内で調達するようになり、採算性が高くなった。やがてノボシビルスクの国際空港の外壁に採用されるなど実績を重ね、業界での地位を固めていった。ただ、古い工場ゆえ生産効率には改善の余地が大きくあり、光熱費なども高くついていたことから移転を検討。最終的に、建設費の補助や税の優遇などを受けやすく、物流の要所でもあるノボシビルスクの産業団地に全面移転することを決めた。

 2014年末に1号棟が完成し、翌年すぐに本格操業を開始。それから1年半ほどで2号棟も完成した。これまでの建設コストは約10億ルーブル(約20億円)。現在、1日あたり5000平方メートルまで生産できるという。

 同社の場合、本格的な国内調達・国内生産にシフトするタイミングで、ちょうどルーブル急落が起きた。同業者のうち、輸入品を主としていた競合は経営が苦しくなり次々と倒れていった。かつてSIBALUX製品は市場平均より少し値段が高かったが、輸入材の値上がりで市場価格が上昇。一方の同社は新工場稼働で生産効率が上がったためむしろ値下げしており、今では同社製品は市場平均より安く、ビジネスには追い風が吹いているという。

 同社COOのイーゴリ・ウトキン氏はこう語る。「当社はルーブル安を受けて国内生産を始めたというより、以前から計画していたのが実態。結果的にルーブル安は生産コストにほとんど影響せず、むしろ競合を減らしてくれた点でありがたかった。ルーブル危機と言われますが、当社にとっては危機でもなんでもありませんよ」。

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最終更新:7/27(木) 11:20
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