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なぜ日本企業はシベリアを目指さないのか?

7/27(木) 11:20配信

Wedge

州の工業団地でアメリカ企業も生産

 ところでSIBALUXの工場があるのは、前述のようにノボシビルスク州が管理する産業団地エリアの中である。州投資エージェンシーによれば、エリア内の電気や水道、通信などの基礎インフラ整備はほぼ予定通りにできているものの、入居企業の確保はまだまだで、キャパシティの6割程度しか契約できていないという。現時点の契約社数は16だ。約700ヘクタールのゾーンを見渡すと確かに空き地だらけだった。

 だが、すでに入居している企業には、スニッカーズで知られる米国の食品メーカー「マース」や、イタリアの業務用冷蔵庫メーカー「arneg」などの外国企業もある。また建物はまだできていないものの、菓子のオレオやリッツなどで有名な米国の「モンデリーズ」も契約済みだ。州投資エージェンシーは今、韓国ロッテグループとも話し合っているという。

 米マース社が当地で生産しているのはペットフードで、工場進出は1990年代にさかのぼるようだ。当時ロシアには動物用の食べ物はほとんど存在せず、ペットには人の食べ物を分け与えていた。マースは、ロシアの地理的な中心地であるシベリアにペットフード生産拠点を構えて各地に流通させており、さらなる拡張計画も持っているという。マスコミで報じられる、ロシアと西側の経済制裁合戦とは少し趣の違う光景がそこにあった。

建設資材調達も自前で

 ものづくりの波は、純然たるメーカーだけにとどまらない。ノボシビルスク州内の最有力建設会社と目される「シベリア」社のチェルボフ・ドミトリー社長は、建設資材を自社で生産し始めていることを明かす。

 シベリア社は1990年創業。大型マンションの企画・建設・販売をメイン業務に、自社保有トラックを使った輸送サービスや、重機での砂利採取、川魚の養殖、また隣接州での鹿牧場運営など、多様な事業を手がけている。ある地域では域内向けの発電・温熱供給所も経営しており、実態は建設会社というより広域にまたがる複合企業体といったほうがよいかもしれない。建設分野で言えば同社が今まで建てた住宅の延床面積は200万平方メートルに及び、地元の業界では知らない者のいない存在だ。社員数はグループ全体で約1500人という。

 チェルボフ社長によれば、ルーブル安の影響で国外とのビジネスが減っているのは事実だ。だが、今まで輸入に頼っていた部分が国内調達・国内生産でまかなえるようになってきたプラス面も大きいという。シベリア社でも、このところ建設資材の95%は国内産。去年は自社で外壁材や換気用パイプの工場を開設し、順調に稼働しているという。外国人が考えるロシア経済悲観論、例えば「ロシアはルーブル安ですべての輸入物が値上がりして今は誰もモノを買えない、経済はお先真っ暗」といった見方は表面的すぎるのかもしれない。

 同社長は、「ルーブルが急落した割に、物価上昇は想像ほどではなかった。これからの国内経済の先行きについては楽観的。住宅マーケットは足下こそ停滞しているが、これは住宅ローンの高金利が主因で、政策的にローン金利を下げる話もある。住宅が足りていないノボシビルスクでは、必ずまた販売が伸びてくる」と見る。その上で、「ものづくりは今のロシアの有望分野。農業もいい。私の友達は去年農業に10億~15億ルーブル(日本円でおよそ20億~30億円)を投資して温室をつくって、フルーツの栽培を成功させている」と付け加えた。

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最終更新:7/27(木) 11:20
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