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感情に流されないことがポイント!家を売買する時に重要な心理学

7/27(木) 7:30配信

@DIME

 大きな買い物のひとつである住宅はもちろん購入後の生活の満足度を占うものになる。つまり多くの場合、人生を左右する買い物なのだ。それだけに住宅は人にさまざまな感情を抱かせるものであり、この点が住宅を他の所有物と異なる独特の存在にしている。そして住宅にまつわるこうした感情を無視することは、人を誤った判断に導くということだ。

 家を売り買いする際、感情が人を盲目にする場合があるということで、昨年の「The Wall Street Journal」の記事では住宅にまつわる心理を解説している。住宅の所有にまつわる感情を無視することは財政的に悪い判断を下すことに繋がり、それは当然ながら住み続ける限り影響を及ぼすものになるのだ。

■全体像が見えなくなる

 住宅選びにおいては、どうしても細かい特徴に目が向いてしまいがちである。もちろん広い庭や車庫は暮らしを豊かにしてくれるが、実際にそこに暮らした場合、どんな生活の変化が生じるのか詳細に検討することが求められる。

「今より良い家に引っ越せば、今より幸せな生活が待っていると人々は考えます。しかし実際に新居に移ってみると、全体的な幸福度にそれほどの変化はありません。引越しにはさまざまな条件の引き換えがあり、それぞれ打ち消しあっているからです」と2010年の研究で米バージニア大学のシゲヒロ・オオイシ教授は指摘している。

 もっともありがちな引き換えの関係は通勤時間が長くなることである。家族が快適に暮らすことまず第一に考えて選んだ住宅はそれなりの広さと引き換えに立地が郊外になる傾向がある。通勤時間の増加は少なからぬストレスを生じさせ、生活の全体的な幸福度を損なわせるものになるのだ。実際に2008年の研究で、長い通勤時間は主観的な幸福度を低下させていることが報告されている。

「友人たちと離れた場所に住むことは、あなたの幸福のためには良いアイディアではありません」とブリティッシュコロンビア大学のエリザベス・ダン教授は述べている。

 そして近隣住民のコミュニティも重要であることは言うまでもない。そしてこうしたソーシャルな要素は、実際に住んで生活してみるまでよくわからないから厄介である。

 エリザベス・ダン教授は別の研究で、寮生活を行なう大学生が部屋をどのように評価しているかを探っている。新入生は寮の部屋を外からわかる特徴、例えばよりキャンパスに近い立地、新しさなどの外見的魅力、部屋の広さ、ダイニングホールなどの共用施設の好ましさなどを第一に考えていることがわかったという。しかしその後、これらのことは充実した寮生活にとって取るに足らないことであり、ルームメイトや周囲とのソーシャルな関係が最も重要であることを徐々に理解してくるということだ。

「(住宅の)物理的な特徴を比較することはとても簡単なことですが、検討している物件の場所があなたのソーシャルな交流をどのように形成するのか、立ち止まってよく考えてみるべきです」(エリザベス・ダン教授)

 まさに木を見て森を見ていないということであり、住宅を見て住宅街を見ていないかどうか、よく検討することが求められているようだ。

■購入後の大きな出費に頭が回らない

 なぜか住宅に関しては不動産価格を支払った時点でおおよその出費が済んだと思い込みやすいということだ。しかしまだまだそこから出費がかさむのである。エアコンや家具、照明設備やキッチン設備、オーディオ&ビジュアル設備、防犯設備など、意外にもその後に出費がかさんでくることをあまり自覚していない人が少なくないという。

「住宅を購入する際には家具のことも同時に一緒に検討しましょう」とジョージ・メイソン大学の経済学者であるアレックス・タバロック教授は語る。

■賃貸住宅の選択を排除しない

 住宅を購入することには心理学的メリットがあるという。ある研究では、住宅の購入によって大きな達成感を得て、メンタルが高揚し意欲的になれるということだ。また住宅の所有者は賃貸住宅に依存しないことで、自分の生活を完全にコントロールできると感じて強い自信を得られる。

 しかしながらその一方で、実際に購入してみないことには理解できないネガティブな要素もあるという。ある研究では不動産所有が過度のストレスになり得ることが指摘されている。

 広い家であるほどメンテナンスに時間がかかり、休日を庭の手入れで費やしてしまうケースも出てくる。こうしたことを楽しめればよいが、できればやりたくないという人もいるだろう。また財政面についても、住宅ローンは仕方ないにせよ以前よりも高額になった水道光熱費や各種の修繕費、固定資産税など意外にも財政面の負担が大きいことを実感することになる。

■大きなリターンを期待してしまう

 イェール大学のロバート・シラー教授らが2014年に発表した研究によれば、住宅オーナーは売却に際して楽観的過ぎる期待を抱いているということだ。

 シラー教授らは住宅オーナーに詳細な質問による調査を行ない、住宅購入者は不動産の高い長期価格を極度に期待している傾向を突き止めた。なぜか将来の不動産価格に楽観的なのである。この傾向は、自宅であるにせよ不動産の所有をかなりの部分で投資と考えていることになり、資金があればほかの不動産にも手を伸ばしかねないことになる。あるいは定年退職後に備えた資産として不動産を購入するケースもあるだろう。

 しかし、いずれにしても多くの場合その期待は楽観的過ぎて、実際に売りに出そうとして市場価格を知らされると愕然となることが多いということだ。

 なぜ不動産オーナーは楽観的なのか? シラー教授らはそれは貨幣錯覚(money illusion)からくるものであると推測している。貨幣錯覚とは貨幣の金額ベースでの価値判断に偏ることで、実態経済の市況を誤認してしまう現象だ。マクロな観点からすればこれは不動産バブルを招きかねないものでもある。ここにも住宅オーナーの盲点があるということになるだろう。

■不動産売却は儲けよりも損失回避の心理が働く

 自宅を売りに出しているものの、設定している価格が高すぎるためかなかなか買い手がつかない人々もいる。これまでの研究では、自宅を売りに出す行為を最も後押ししている感情は、金儲けをしたいという思いよりも、損をしたくないという損失回避(loss aversion)の感情であるということだ。

 損失回避は行動経済学における最も代表的な理論のひとつであるプロスペクト理論で使われる用語で、基本的に人は50%の確率で利益を受けられる選択よりも、確実に負債が減免されるほうの選択を選ぶという原則である。つまり人はうまくいけば儲かるという選択よりも、なるべく富を失わないで済む選択をしがちでなのだ。

 したがって自宅を売りに出す場合、購入金額と同じかほんの少し高額な価格が設定されることが多いということだ。もちろん不動産価格が上がり続けている時であれば、こうした価格設定でも売れることはあるだろうが、コロンビア・ビジネス・スクールのクリストファー・メイヤー教授によればこうした価格設定はあまり良いアイディアではないことを指摘している。なぜなら今現在の不動産価格は当該の物件を購入した時点の価格とはまったく別物であるからだ。したがって売りには出すものの、まったく買い手が現れないこともじゅうぶんあり得るということだ。

 もちろん、この先社会の経済状況が大きく上向いた場合には不動産価格も値上がりして売り出し中のオーナーの望みが叶うことがあるかもしれないが、現状では難しいかもしれない。売りたいのであればそれなりに現実的な価格にしなければならないということだろうか。

 住宅に関して抱き得る独特の感情をよく理解し、誤った判断を下すことがないようにしたいものだ。

文/仲田しんじ

@DIME編集部

最終更新:7/27(木) 7:30
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