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AIでテロを封じ込められるか? --- 松本 徹三

7/27(木) 17:02配信

アゴラ

テロの脅威はとどまるところを知らず拡大する

かつては、米ソの二超大国が、お互いに全人類を破滅させるに足るだけの核兵器を実戰配備し、キューバ危機のような一触即発の危機もありました。現在はこの種の危機は遠のいたとはいうものの、未だ完全になくなったわけではなく、また、それ以上に、比較的小さな勢力による武力抗争やテロ活動が世界中で頻発し、それが果てしなく積もり積もって、全人類の破滅へとつながっていくリスクがないとは言えません。

問題は、かつては「刃物を振り回して数十人を殺傷する」程度で収まっていたテロが、現在は「自動小銃の乱射」や「爆発物を体に巻きつけての自爆」が主流になっていて、殺傷の規模が一桁上がっていることです。この程度で済めばまだ良いのですが、今後、小型の核兵器、化学兵器、生物兵器の管理体制が緩み、これが小規模の集団の手に渡るような事態になると、もはや我々は、どこにいても安心はできなくなります。

狙われるのは、旅客機にとどまらず、クルーズシップや高速鉄道にも及ぶのは勿論、ありとあらゆるイベントが、「そこに多くの人が集まる」というただそれだけの理由で、テロリストの標的となります。人質をとって交渉するというハイジャックは、成功の確率が低いですが、「大勢の人達を殺傷して快哉を叫び、世間に警告を与える」ということだけが目的となれば、そのような試みを事前に察知することも、寸前に抑え込むこともほとんど不可能になるでしょう。

そうでなくとも、テロは、仕掛ける側に比べ、防御する側に十倍も百倍もの金と時間がかかります。これに要する社会コストは膨大なものになり、しかも「人権侵害」とか「言論弾圧」とかの非難を注意深く避けながらの対策が求められるので、効率は更に低くなるでしょう。将来の人間社会は、果たしてそれに耐えられるでしょうか?

監視社会は避けられない

テロを防ごうと思えば、すべての人を疑い、色々なところに関門を作って、所有物をチェックするしかありません。これは現在も既に色々なところで行われており、多くの人達の怨嗟の的になっていますが、これをやめろという人は滅多にいません。殆どの人が「テロの犠牲になる確率が減るのなら、少しぐらいのことは我慢しよう」と思っているからでしょう。

一般人の怨嗟を最小化しながら、テロを事前に防止しようとすれば、第一に「疑う対象になる人を絞り込むこと」が必要であり、第二に「武器や爆発物、その他、人を殺傷する仕掛けの材料になりうるすべての『モノ』の移動をチェックすること」が効果的です。つまり、人と「モノ」の監視体制を現在の二桁(十倍)以上、或いは、三桁(百倍)以上に上げることです。

現在の大都市には至るところに監視カメラがあり、我々の日常は既に徹底的に監視されています。しかし、現実に、犯罪捜査に際しての監視カメラの貢献度は極めて大きく、多くの犯罪者の検挙に大きな成果を上げていますので、「監視カメラ絶対ハンターイ」という人は今は皆無です。

「モノ」のチェックの方が、人のチェックよりは抵抗が少ないでしょうが、結局は「誰が、どんな目的で、その様な危険なものを買ったのか?」を探るのがポイントですから、とどのつまりは「疑う対象になる人」を絞り込むのと同じことになります。

かつては、疑う対象者が決まると、そのそれぞれを私服の警察官等が尾行するしかなかったので、そのコストは膨大であり、対象者を徹底的に絞り込まざるを得なかったわけです。しかし、現在は、監視カメラと携帯電話システムを有機的に組み合わせることにより、このコスト効率は飛躍的に上がりました。

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最終更新:7/27(木) 17:02
アゴラ

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