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朝日記者らの「フェイクニュース論」2冊の難点 --- 中村 仁

7/27(木) 17:08配信

アゴラ

何が真実か分からない情報時代

ネット社会を生き抜くには、フェイクニュース(偽情報)の見極めと、ファクトチェック(事実の検証)を欠かせない時代になりました。ほぼ同時に発刊された「フェイクニュースの見分け方」(新潮新書、烏賀陽弘道著)と「民主主義を壊すフェイクニュースの正体」(朝日新書、平和博著)を読んでみました。烏賀陽氏は朝日記者OB、平氏は朝日の現役記者です。

烏賀陽氏の本を読み始めると、題名(タイトル)にあるフェイクニュースのことはあまり書かれていません。書かれているのは、新聞、テレビ、雑誌、書籍、ネット情報の真偽の見分け方がほとんどです。ファクトチェックの仕方、ノウハウが中心になっています。それで「えっ、この本は題名と内容が違うのでは」が、真っ先に抱いた感想です。

平氏の本では、フェイクニュースは「事実に基づかない偽情報で、ネット上に拡散していく」との定義が紹介され、「拡散しやすいようにインパクトの強い見出しをつけ、見出しと本文の内容が一致しないことが多い」などど、書かれています。ネット上に飛び交う意図した偽情報、その拡散がフェイクニュース論です。烏賀陽氏の本は、見出しと本文が一致しない。なるほど、この本こそ、フェイクニュースの一例ではないか。

ファクトチェックの必要性と限界

恐らく、烏賀陽氏の題名は当初、「ファクトチェック論」みたいなものだったのでしょう。固いタイトルでは売りにくいし、最近のはやりはフェイクニュースなので、担当編集者が著者と相談の上、題名を変えたと想像します。どうでもいいような話であっても、「フェイクニュース」を論じる本が「フェイク」だとは、皮肉です。もっとも古くからあるデマもフェイクでしょうから、フェイクの範囲を広げて考える意味はあります。

烏賀陽氏は当初の目的であったであろうファクトチェックでは、辛辣なことを書いています。福島原発事故の際、現場責任者だった吉田昌郎氏を取り上げた「死の淵を見た男」(門田隆将著)は「戦争に匹敵する過酷な状況で命を賭けた闘いの勇者」として描いているとし、よくある英雄譚の一種と、斬り捨てています。なるほど。

「吉田氏は本店勤務時代に、高い津波襲来の想定を否定し、結局、原発事故と汚染・被曝という大惨事を招いた戦犯の一人なのだ」と、位置づけています。「英雄」、「勇者」など一面的な情報だけを取捨選択していると、批判します。「ものごとはネガティブな情報も等しく、公平にみる」ことでファクトに近づけるというのです。そうでしょうね。

STAP細胞の「発見者」とされる小保方春子氏の手記「あの日」も、烏賀陽氏は「生い立ち、身辺記録、調査委員会の聴取による心理的・身体的圧迫、マスコミの過激取材のことは書かれている。肝心なことが書かれていない。STAP細胞は存在するという主張を証明する記述は見つけられなかった」と酷評します。本や記事を正しく評価するには、「STAP細胞を否定するなど、正反対の立場の記事、書籍に目を通しておくことが必要だ」といいます。多面的にみよ、ということです。

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最終更新:7/27(木) 17:08
アゴラ

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