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暖簾に腕押しとなりそうな米海軍の対中牽制計画

7/27(木) 6:00配信

JBpress

 4月にフロリダで行われた習近平国家主席との会談以降、トランプ大統領は中国に対する強硬的態度を引っ込める姿勢をとっていた。北朝鮮のICBM開発を抑制させるために、中国が影響力を行使することを期待していたからである。

 しかしながら、3カ月を経過しても“中国の北朝鮮に対する影響力”が功を奏する気配はない。北朝鮮のミサイル開発が抑制されるどころかICBM試射は成功してしまうし、そもそも中国が北朝鮮に対して本気で圧力をかけようとしているのか?  という疑念が深まってきた。

 その結果、トランプ大統領は大統領選挙期間中に口にしていた中国に対する“強面”な政策を復活し始めた。そのうちの1つが、かねてより海軍から提出されていた南シナ海での積極的行動計画である。先週、トランプ政権がその中国抑制計画を承認したことが明らかになった。

 その計画とは、「南シナ海に海軍艦艇や各種軍用機を送り込んで、『公海での航行自由原則維持のための作戦』すなわちFONOPを頻繁に実施し、恒常的にアメリカ海洋戦力の南シナ海におけるプレゼンスを維持する」というものである。

 アメリカ海軍が「南シナ海でのFONOPを恒常的に繰り返す」といっても、それが直ちに中国による南沙諸島や西沙諸島の軍事拠点化を中断させる可能性はゼロに近い。しかしアメリカ海軍は、FONOPに限らず南シナ海に海軍艦艇や軍用機を頻繁に展開させてアメリカ海洋戦力のプレゼンスを示すことこそが、南シナ海をはじめ東アジアでの中国の覇権確保に対する唯一の軍事的牽制行動であると考えており、海軍の存在価値を高めるためにもなんとしてでも実施しようというわけだ。

■ 議論がかみ合わないアメリカと中国

 ところが、南シナ海に対するアメリカの立場と中国の立場は、そもそも議論がかみ合っていない。いくらアメリカ海軍が頻繁にFONOPを実施しようが、恒常的にプレゼンスを示そうが、中国による南シナ海への覇権的進出政策に対して少しも牽制にはならない可能性が高い。アメリカと中国のそれぞれの主張を見ていこう。

 【アメリカの立場】

 アメリカがとっている基本的な立場は以下のとおりである。

 「南沙諸島に中国が誕生させ軍事拠点化を推し進めている7つの人工島は、もともと国連海洋法条約の定義に従うと『暗礁』と定義されるため、特定の国家の領土となりうる要件を持ち合わせていない。それら“中国人工島”は中国が勝手に『海洋に建設した陸地』であって、国連海洋法条約が規定する領海や排他的経済水域などの基準とはなり得ない。

 要するに、中国が暗礁を人工島化して立派な飛行場を建設しようが、本格的軍事施設を設置しようが、それらの人工島は中国の領土とはなり得ない。

 したがって、アメリカの軍艦がそれらの人工島から12海里以内の海域を通航することはもちろん、公海上であるからには国連海洋法条約が禁止しているような行為(たとえば海賊行為)以外のいかなる行動を取っても何ら問題は生じない」

 (ただし「いかなる行動も取りうる」とはいっても、これまでのところ、場合によっては中国との軍事衝突が起きかねない軍事的威嚇とみなされるような行動は差し控えている。)

 中国は、上記のように国連海洋法条約上中国の領海にはなり得ない「暗礁を改造した人工島の周辺海域」を、あたかも「中国の領海」であるかのごとく振る舞っている。加えて、国連海洋法条約に規定されていない「中国の領海内を航行するには、事前に中国当局に通告する」ことも国際社会に求めている。そこでアメリカ海軍は、「このような中国の勝手な振る舞いを見過ごしていると、やがては中国が領土と主張している南沙諸島人工島や西沙諸島などの周辺海域のみならず、南シナ海全体へと“中国の横暴”が広められてしまう」との強い危惧を抱いている。

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最終更新:7/27(木) 6:00
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