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冷し中華はナント「八百万の神」のひとつだった!? ニッポン「冷し中華」考【後編】

7/27(木) 18:01配信

現代ビジネス

 日本の夏を象徴する「冷し中華」。ポピュラーな食べ物だが、意外と知られていないその実像をコラムニストの堀井憲一郎さんが大真面目に調査した。ディズニーランドの不文律、そしてラーメンとの根本的な違いまで、知られざる真実を明かす怒涛の後編! 

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⇒冷し中華はなぜ期間限定なのか? 前編」はこちら gendai.ismedia.jp/articles/-/52377
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ディズニーランドの不文律

 東京ディズニーランドにも冷し中華(のようなもの)がある。シーにもある。

 どちらにも中華料理店があり、そこに夏のメニューとして(だいたいの年には)用意されている。

 ちなみに2017年はランドのほうに「ローストチキンの涼麺」があって、これがまあ冷し中華ふうのもの、シーには「冷やし担担麺」があって、つまり少し辛い冷し中華ですね。

 ご存知だとはおもいますが、担々麺は辛くてときにアーモンドな香りもしてとてもおいしい麺ですが、男子的に決定的な欠落があってそれは標準の担々麺には挽き肉以外の肉が入ってない、ということで(チャーシューを入れるところもありますが、スタンダードなものは入ってないですね)、担々麺を食べるたびに、ああ、肉がないチャーシューがない、肉塊がなーい、という気分になってしまうわけで、いやだからどうだってことはないですが、でも肉感が薄いです。いまおもいだしたので書いているだけです。

 でもメニューにのってるとときどき無性に食べたくなるもので、なんというか悪女のような食べ物だ。男は悪女がみんな好きです(たぶん。そしてだいたい向こうに好かれてないです)。

 東京ディズニーリゾート内の中華料理店では、「涼麺」という名前で出ていることが多いようですが、まえは「冷やし麺」と呼んでたこともあったし、「冷麺」と表示されていることもあった。

 いちど、ディズニーシーで「冷麺」と表示されてるときに、これはまさか韓国料理的な冷麺ではないのかと一瞬、心配して(見本が出てるんで見ればだいたい想像つくんだけどいちおう)係りの人に確認したことがある(なにせ1978年三田での冷麺悲劇のトラウマがあるので→前編参照 gendai.ismedia.jp/articles/-/52377)。

 案内係のお姉さんは、韓国料理ではないです、と答えてくれたのですが、そのあと料理カウンターを進んでいると(歩きながら料理を自分で取るシステムのお店でした)、上司っぽいメガネの女性が出てきて「韓国の冷麺ではありません」と重ねて回答してくれた。

 そうですか、冷し中華なんですね、と和やかに聞いたつもりだったが、これがよくなかったようで、しばらくしてこんどは、高い帽子のいかにもシェフふうの男性が出てきて(たぶんシェフだったんでしょう)「冷麺といいましても韓国料理の冷麺ではありませんし、また関西で呼ぶ冷麺とも違います」と説明してくれたのであった。

 おれ、完全にクレーマーになってるじゃんとおもったけど、しかたありません。申し訳ない。そんなつもりじゃなかったんだけど、世の中のクレーマーのほとんどはそういうつもりじゃなくなっちまってるんだろうな、とひとり反省しております。

 その後、毎年みてるけど、だいたい「涼麺」という表示になってるようにおもう。

 私としては、冷たいラーメンで、野菜と卵とチャーシューがのっているなら冷し中華でいいじゃないかとおもったけれど、そのときの説明では「酢を使っておりませんので、冷し中華とも違います」ということだった。

 たしかに夏の冷し中華がうまく感じるのは、あの甘酸っぱいタレの力によるところが大きいですが(麺を食べ終わっても、あのタレを少し飲みたくなるし、ときに皿を傾けて飲みますもんね。え。飲まないですか。飲んだほうがいいっすよ)、でも、冷し中華は必ず酢が入ってないといけない、ということもないと、個人的にはおもっているので、少し面食らった。麺も食らいましたけど。うまい。うまかないです。

 ごまダレにはふつう酢は入ってないので、となると「ごまダレ冷し中華」は酢を使ってないけど堂々と冷し中華を名乗っているわけで、だからといって公正取引委員会も警視庁公安部も「全員、動くな。その冷し中華を調べさせてもらう」なんて叫びながら出てきたことはない(とおもう)。

 でもディズニーの食堂では「酢を使っていないものを、冷し中華と呼んではいけない」という不文律があるみたいで、それはそれでディズニーらしい規律に見えます。ひとつの尊重すべき見識だと言えるでしょう。

 わたしゃどっちでもいいとおもいますけどね。

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最終更新:7/27(木) 18:01
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