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池上彰が斬りこむ! 乱世に生まれる新しい経済人たち(2)「ビル・ゲイツ、ザッカーバーグに続くのは…」

7/27(木) 15:00配信

週プレNEWS

池上彰(いけがみ・あきら)さんの『世界を動かす巨人たち〈経済人編〉』(集英社新書)が刊行された。

読書情報誌「青春と読書」の連載をまとめたもので、〈政治家編〉に続く、歴史を動かす「個人」から現代世界を読み解くシリーズの第2弾だ。

本書に登場する経済人たちは、以下の11人。ジャック・マー(アリババ)、ルパート・マードック(メディア王)、ウォーレン・バフェット(投資家)、ビル・ゲイツ(マイクロソフト)、ジェフ・ベゾス(アマゾン)、ドナルド・トランプ(米大統領)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック)、ラリー・ペイジ/セルゲイ・ミハイロビッチ・ブリン(グーグル)、コーク兄弟(大資産家)。

そこで連載を振り返りつつ、現代世界における「経済人」の役割について、前編「トランプは商売人の発想を国際政治に持ち込んできている」に続き、池上さんにお話を伺った。

■人々を動かすのではなく自分(たち)がやる

─リーダーシップという観点から見ても、ここに登場してくる人たちはそれ以前の起業家と明らかに違うように思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

池上 ここに出てくる経済人たちと「リーダーシップ」という言葉とは、ちょっと微妙な関係にあるような気がしますね。一般的には多数の人々を動かすとか導くとか、そういうものとしてリーダーシップという言葉が使われますね。ところが、彼らはそうじゃない。たったひとりで、あるいはふたりだけで世の中を変えてしまったわけです。その意味では、リーダーシップという言葉は彼らには当てはまらないんじゃないかと思います。

結果的に企業の経営者としてリーダーシップをとってはいますが、ビル・ゲイツもザッカーバーグもたったひとり──厳密にいえば仲間がいますが──で事業を立ち上げているし、グーグルだってふたりだけで始めたわけですね。世の中、これからはこれなんだと見極めたら脇目も振らずにそこに向かって邁進していく。今ここで自分(たち)がやらなければという焦燥感のようなものが、彼らを花開かせたのだと思います。

─今後、彼らと同様、あるいはそれ以上に歴史を大きく動かす人物が現れるようなことはあり得るのでしょうか。

池上 当然、あり得ると思います。そうであるがゆえにグーグルなどはそれを恐れているわけです。ビル・ゲイツがCEOから引退する時に「あなたのライバルは誰ですか」と聞かれて、「どこかで小さな会社を起こし、自宅のガレージを作業場に何かを生み出そうとしている若者たちだ」と言ったのですが、それがまさにグーグルだった。実際にその後、グーグルが急成長してマイクロソフトを脅かす存在になったわけですね。

で、そのグーグルが今、何をやっているかというと、かつて自分たちがビル・ゲイツの脅威となったように将来、グーグルを脅かすような若い芽をいち早く摘もうとして、あらゆるところに目を向けている。そして、これぞという何か新しいものをやり始めているのがわかると、そのノウハウ、あるいは会社自体を高額で買い取ってしまう。

例えば、東京大学の研究室から独立したベンチャー企業SCHAFTが独自の二足歩行ロボットを開発したのですが、それが2013年にグーグルに買い取られてしまった(SCHAFTは2017年6月にソフトバンクが買収を発表)。グーグルはそれを使って、自動車の自動運転などに生かそうとしていたんです。

─グーグルはそこら辺、徹底していますね。

池上 徹底しています。少しでも将来的な可能性のある技術を手当たり次第取り込んでいく。はたしてそれでいいのかという議論もあるのですが。

─しかし、彼らの成功そのものが次の世代に勇気を与えているという側面もありますね。

池上 それは間違いなくあります。かつての東西冷戦時代には、国際体制が固定化していて、なかなか大きな変化が起きにくかったのですが、冷戦が終わってその体制が崩れ、いわゆる国境がないような状態の混乱の中から新しいものが出てきた。現在もある意味では流動的な情勢ですから、そういう乱世にこそ実力を発揮するタイプが新たに出てくる可能性は大いにあると思います。

─地域でいえば、今後、中国のアリババに続いてアジア圏の中から世界を席捲するような人たちが出てくる可能性もあるかと思うのですが。

池上 十分ありますね、今後は中国に代わって東南アジアのシンガポール、あるいはマレーシア、それにインド辺りから間違いなく出てくると思います。現に、東工大の私の授業でいつも熱心に質問してきたインド人と中国系タイ人のふたりの留学生が一緒になって起業したのですが、彼らはきっと近い将来、何か面白いことをやってくれるんじゃないかと期待しているのですが。

そうしたところからまた新しい経済人が生まれてくるのでしょうね。

※このインタビューは「青春と読書」8月号に掲載された記事を再掲載したものです。

(取材・構成/「青春と読書」編集部 撮影/山口真由子)

●池上彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト、名城大学教授、東京工業大学特命教授。1950年長野県生まれ。73年、慶応義塾大学卒業後、NHK入局。94年から11年間、「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年よりフリーに。著書に『そうだったのか! 現代史』『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』『世界を揺るがすトランプイズム』等多数

■『世界を動かす巨人たち〈経済人編〉』(集英社新書 760円+税)

最終更新:7/27(木) 15:00
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