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弁護士費用は100万円!? 痴漢で逮捕されたらいくらかかるか計算してみた

7/27(木) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 もし痴漢で逮捕されてしまったら、どうなるのか。

 ここまで痴漢冤罪で逮捕されたときの送検や示談金交渉など一連の流れについて説明してきたが、今回はそこにかかる費用について説明したい。これは筆者の体験や取材に基づく事実である。本稿では、ただ事実を淡々と説明するにとどまる。法的なアドバイスについては専門家の意見を参考にしていただきたい。

 痴漢事件で起訴された場合、そこに必要な費用は裁判期間によって変わってくる。痴漢事件の場合、初犯であれば、たいていの人はわざわざ法廷で裁かれる公開裁判ではなく、裁判を省略して逮捕直後にすぐに罰金を払って刑事手続きを終了させる“略式手続き”を選ぶ。

◆痴漢冤罪裁判にはいくらかかる?【1】

 痴漢事件に巻き込まれた場合、その容疑が強制わいせつ罪でなく、迷惑防止条例違反であれば、法廷で争う裁判にまでもつれ込むのは、被告人が容疑を否認しているときがほとんどだ。つまり、冤罪を主張している場合だ。

 容疑を否認している裁判だと、第1回公判は「人定質問」から「冒頭陳述」までで終了し、検察側・弁護側の双方から申請される[証人質問]をはじめ、様々な証拠調べは次回からの公判に持ち越される。この証拠調べの場で、検証される証拠や、証人の数によって、裁判の長さが決まるといってもいい。

 万が一、痴漢事件で有罪判決になった場合、迷惑防止条例違反であれば40万~50万円程度の罰金刑、強制わいせつ罪であれば6か月~2年程度の懲役刑に執行猶予がつくといった量刑が相場である。

 刑事裁判は起訴されてから、実際に第1回目の公判が開かれるまで、およそ2か月かかるうえ、1か月に1回程度しか公判も開かれない。つまり事件が発生してから、裁判の判決が下るまで最低でも3~4か月、否認裁判であれば1年を超えることもよくある。

 迷惑防止条例違反で、最初から罪を認めて略式手続き(前述)で罰金を払うと、だいたい30万円くらいで済む。しかし、容疑を否認して裁判で戦ってしまうと、裁判官が、

「罪を認めてないなんて、反省してない」

 と判断し、罰金額が高くなってしまうのである。

 また、弁護人に支払う弁護費用は、国選弁護人であれば無料だ。ただし、私選弁護人の場合、弁護人契約次第だ。事前にしっかり確認しておこう。

 また、意外に知られていないが、刑事裁判でも裁判所が公判を開廷するためにかかる“訴訟費用”は、敗訴した側が支払うのが原則である。刑事裁判にかかる費用は8万~10万円オーバーで、後日、裁判所から請求書が届く。

 金額に幅があるのは、公判で証言する証人の交通費や日当がそのまま請求されるため、法廷に呼んだ証人の数によって請求額が変わってくるからだ。もっともこの訴訟費用は、減額や免除が可能なので、とりあえず裁判所に相談してみよう。

◆痴漢冤罪裁判にはいくらかかる?【2】

 第一審で敗訴したあと、判決に不服があれば、“上訴”して再び裁判をすることは可能だ。

 控訴してまた裁判が開けるといっても、まず控訴するにはタイムリミットがある。それは[判決]の出た日の翌日から、14日以内というモノだ。このタイムリミット内に控訴手続きをしないと、判決が確定してしまうので、それ以後に控訴を申し立てても、もう受け付けてもらえない。

 ただ、この14日間に控訴審(第二審ともいう)で戦えるだけの訴訟資料を用意する必要はない。控訴する気があれば、“控訴申立書”というペラ1枚の書類を書いて、第一審を下した裁判所に提出するだけでいいのだ。すると、第一審を行った裁判所(普通は地方裁判所)は、裁判資料を高等裁判所へ回し、いよいよ控訴審が開始されるのである。

 控訴審の第1回公判が開かれるまでに、被告側が高等裁判所に出さなければならないのは、控訴をした理由を書いた“控訴趣意書”という書類だ。これは被告人自身が書いても問題はないが、やはり弁護士もアドバイスに出かけている。

 そして、一番のポイントは、事件に関して第一審では争われなかったような、新証拠や新証人を準備することだ。

 そんな控訴審で掛かる費用は意外に高い。というのも弁護士の弁護人契約は裁判の[判決]で終わってしまうのだ。つまり、第一審の判決が不服で控訴した場合、新たに弁護士を雇わなければならないのである。

 ただし、控訴審でも国選弁護人は使えるので、引き続き国選弁護人を頼めば、やっぱり弁護人費用はゼロで済む。だが、私選弁護人だった場合、弁護士の活動は第一審の判決で終わりなのだ。引き続き同じ弁護士を弁護人として雇うとしても、頼りにならないから別の弁護士に弁護人を頼むにしても、もう一度弁護人契約を結ぶ必要がある。契約に関する費用は最初に弁護士を雇ったときと同じで、着手金プラス必要経費、そして成功報酬だ。

 金額的にも控訴審だから高いとか安いという料金システムになっている弁護士はまれで、大抵の弁護士は第一審の時と同じだ。また成功報酬を支払う条件や、着手金のみ(基本料金)で出来る仕事内容など、細かい条件を正式契約前にちゃんと詰めておかなければならないのも、最初に弁護士を雇う時と同じだ。

 控訴審まで戦うのであれば、当然、否認事件なので、着手金は50万円程度で成功報酬も同じくらいだろう。つまり控訴審でドラマの如く逆転無罪を勝ち取れれば、弁護士費用だけで100万円以上掛かることは覚えておいたほうがいい。控訴審で再び敗訴した場合でも、成功報酬はゼロで済むにしても、新たに弁護人を雇った費用はプラスされるのである。

 そして裁判で敗訴した場合、訴訟費用を負担せざるをえないのも、第一審と同じだ。ただ審理無しでサッサと判決が出た場合、証人の交通費や日当は発生しないので、第一審の時より請求額は安くなるかもしれないので覚えておきたい。

<文/ごとうさとき>

【ごとうさとき】

フリーライター。’12年にある事件に巻き込まれ、逮捕されるが何とか不起訴となって釈放される。釈放後あらためて刑事手続を勉強し、取材・調査も行う。著書『逮捕されたらこうなります!』、『痴漢に間違われたらこうなります!』(ともに自由国民社 監修者・弁護士/坂根真也)が発売中

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