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モダンな選手へと導くユニークなルール作り。アイルランドの育成を変える「リトリート・ライン」

7/28(金) 18:20配信

footballista

文 結城康平


 まるでキャプテン翼に登場するゴールデンコンビ、大空翼と岬太郎のように、昨年夏のEURO2016でセンセーションを巻き起こしたアイルランドには、幼少期から互いを知る親友がいた。ロビー・ブレイディとジェフ・ヘンドリック。2人は常に年代別代表で同じピッチに立ってきた。今回は、前衛的な育成改革によって「黄金世代」を生み出しつつあるアイルランドの方法論――彼ら2人を幼少期から磨き上げた名門アカデミー「セントケビン・ボーイズ」にその根幹がある――に迫ってみたい。


アイルランド新世代の親友コンビ


 開催国フランスを追い詰めたアイルランドの中核は、同学年のブレイディとヘンドリックだった。ともに1992年1月生まれの2人は幼少期からのチームメイトで、親友としても知られている。

 「7歳か8歳の時から、ジェフとは一緒のチームでプレーしてきた」とブレイディが過去を懐かしめば、ヘンドリックは「遠征に行くといつもロビーが同じ部屋だったよ。1人部屋になった今でも勝手に入って来て、部屋の歯磨き粉や備品を持っていく」と笑う。

 1学年上のジェームズ・マッカーシーとともに「アイルランドの新世代」として比較的ベテランの多いチームを牽引する彼らだが、グラスゴー出身のマッカーシーはスコットランドのアカデミー育ち。純国産なのは、キック精度と積極的な仕掛けが持ち味の左サイドMFブレイディと、バランス感覚に優れた左セントラルMFのヘンドリックだ。

 フランス戦のPKを含めて2ゴールを記録したブレイディはもちろん、イングランド2部ダービー・カウンティで力を蓄えてきたヘンドリックも特筆すべき戦術的柔軟性を発揮する。サイドMFでも起用された彼は周りの味方を攻守両面において的確にサポートし、利他的なプレーで組織を支えた。EUROでの活躍でヨーロッパの強豪クラブが関心を示し、大会後に1部のバーンリーにステップアップしている。欧州中のスカウトを虜にした2人は、アイルランド国内のクラブ出身だ。そのアカデミーの名はセントケビン・ボーイズ。「進化を止めないアカデミー」と称賛を浴びる名門は、アイルランド全体の育成にも強い影響を与えている。


バルセロナと互角の名門アカデミー


 2016年に開催されたU-13の大会であるアカデミーカップで、アイルランドの名門は世界最高の育成組織を持つクラブと互角に渡り合った。GSで主力を休ませたバルセロナを1-0で破ると、決勝で彼らと再戦。相手が満を持して主力を動員した一戦は3-3という乱戦の末、PK戦で振り切られた。


 ビッグクラブの注目を浴びる怪物チャビ・シモンズを擁するバルセロナを追い詰めた彼らは、計り知れないポテンシャルを欧州中に示した。マンチェスター・シティが保有する期待の若手MFジャック・バーンズも、このアカデミーの出身者として知られる。プレミアリーグのウェストブロミッチと提携を結んでいることもあり、多くの選手たちは名門アカデミーを経てプレミアリーグを目指す。バルセロナを追い詰めたのは、決して偶然ではない。彼らの強さの秘密はユニークな育成システムにある。

 名門アカデミーの責任者としてアイルランドの原石たちを鍛え上げる男こそ、アラン・カフリーだ。世界的には無名な男が磨き上げた育成組織は、今やバルセロナを追い詰めるほどに研ぎ澄まされた刃となった。スペインの方法論を好んで取り入れる国際派のカフリーは、常に他国から学ぶ姿勢を持っている。しかし、より特筆すべきは「バルセロナのスタイル」だけにこだわらない柔軟性だろう。モデルケースから的確に必要となる要素だけを得ようとする。

 「バルセロナのようにプレーしろ、と選手たちに言っても意味はない。スペイン人の指導者が、どのように選手たちを指導しているのか、その中身を学ぶことに意味がある」

 セントケビン・ボーイズの指導者はトップクラスのチームから学ぶことを奨励されており、その多くがバルセロナの講習会にも参加する。提携しているウェストブロミッチでも貴重な経験を積むことが可能だ。

 常に他国から学ぶことを重視するカフリーの理論は、非常に現代的だ。「アイルランドの選手たちがもともと評価されている献身性を失わず、選手に『フットボールを理解させる』ことが理想」と語る彼は、育成年代の試合を狭いコートで行うことを好む。スペースの狭いコートで4対4や5対5、6対6など、年代ごとに参加人数を変えた試合を行うことを浸透させていくことが11対11でプレーするフットボールの理解に繋がると考えており、育成年代ではボールを繋ぐことを何よりも重視する。

 「7歳から10歳までは、勝ち負けにこだわらずに後ろから繋いでいくサッカーをしていかなければならない。そうすれば11歳になった時に現代的なサッカーに対応できる。指導者は、勝敗にこだわらずに選手たちを指導していく必要がある」

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最終更新:7/28(金) 18:20
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