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再燃する米連邦債務上限引き上げ問題

7/28(金) 8:51配信

NRI研究員の時事解説

<要旨>

今年秋頃には米国政府の債務上限引き上げが期限を迎え、それが実施されなければ米国政府はデフォルトに陥ることになる。最終的にはデフォルトは回避される可能性は高いが、金融市場はそのリスクを徐々に織り込んでいくことになるだろう。またFRBの金融政策も、この問題の影響を少なからず受けるだろう。財務省では主要高官が依然として任命・承認されておらず、この問題への対応力が不安視されている。また共和党内、政権内での足並みの乱れも、この問題に対する金融市場の不安を高めている面があるのである。

米国政府債務上限引き上げ問題

今後、世界の金融市場では、米国の連邦政府債務残高の上限問題に関わるリスクが、再び意識されることになろう。

米国では、政府債務の上限が法律で定められている。それは、第一次戦時下で、政府が戦時国債を大量に発行することを通じて国民の経済的利益が損なわれることがないよう、議会がチェックするという観点から、リバティボンド(自国国債)法で定められたものである。

債務残高が上限に達すると、連邦政府は、新たな借り入れ、国債の利払いが難しくなり、議会による債務上限額引き上げ法案の成立が必要となる。2016年の大統領選への影響を避けるため、2017年3月15日まで債務上限は一時的に無効化されていたが、3月16日よりその適用が再開された。現在の債務残高はほぼ上限に達しているが、会計上の調整や税収の流入、政府資産の売却などの臨時の財政措置をとることにより、しばらくの間は資金繰りを続けることができる余地が生じている。しかしそのような措置を講じても、CBO(米国議会予算局)の予測によれば、10月初めか半ば頃には限界に達するとみられている。

金融市場には既に影響

足もとの米国金融市場では、3ヵ月物TB(短期財務省証券)の利回りが、1.2%近くまで急上昇し、6カ月物TBの利回りを上回る、「逆イールド」現象が生じている(注1)。債務上限の限界に達することが見込まれる時期までに3ヵ月を切ったこのタイミングで、3ヵ月物TBの元利払いが一時的に停止する、テクニカル・デフォルトの可能性が部分的に織り込まれたことが背景にあろう。3ヵ月物TBの利回りは、2009年以来初めて翌日物のOIS(Overnight Index Swap:翌日物金利スワップ)をも上回った。前回、債務上限引き上げの失敗から米国のデフォルトが懸念された2015年には、こうした「逆イールド」現象が見られなかったことから、金融市場が今回は相応に警戒感を強めていることがうかがい知れる。

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