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J2長崎、入場者数上乗せ問題の内実。前体制に代わり責任負った現体制、迅速な対応と調査

7/28(金) 11:35配信

フットボールチャンネル

 25日、Jリーグは理事会を開催し、入場者数を水増ししていたV・ファーレン長崎(J2)に対して制裁金とけん責という処分を下した。3年に渡る数字の上乗せはなぜ起きてしまったのだろうか。4月から高田明氏(ジャパネットホールディングス前社長)が社長に就任し、経営再建を進めるクラブの迅速な対応を含めて検証する。(取材・文:藤原裕久【長崎】)

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●上乗せ問題発覚の発端はコンプライアンス問題を指摘する告発

 25日、Jリーグは「2017年度 第7回Jリーグ理事会」で、3年に渡って24,000人以上の入場者上乗せを行なっていたV・ファーレン長崎への、制裁金300万円とけん責(始末書をとり、将来を戒める)処分を決定した。

 同日、ホームスタジアムのトランスコスモススタジアム長崎で記者会見を行なったV・ファーレンの高田明代表取締役社長は、旧体制時の問題であるものの、クラブとして処分を真摯に受け止め、今後もクラブの透明化へ全力を尽くすことを表明した。

 公式試合入場者数の上乗せ問題が発覚した発端は、昨年からJリーグに寄せられていたクラブのコンプライアンス問題を指摘する告発だ。

 当初、Jリーグは一連の問題についてクラブに調査を委ねていたが、状況が進展しない状況を受けて今年1月から、Jリーグ自らによる調査を開始。調査を進める中で、今回の入場者数の上乗せ問題が浮上し、4月にJリーグからクラブへ同問題の追調査が指示されたという。

 当時のクラブは累積赤字で3億以上とも言われる経営危機が発覚し、ジャパネットホールディングスの完全子会社として再出発を図る大変な時期ではあったが、新たに代表取締役に就任した高田明社長のもとで調査を開始。だが、この時点で運営に関与していたスタッフの多くがすでにクラブを去っていたこともあり、調査は予想以上に難航する。

 その中でクラブは、責任のなすり合いなどの泥仕合にならないよう注意を払いながら、迅速に解決を図るべく数字の確認を優先。上乗せを行なった当時の入場者集計担当者や経営陣、運営委託業者など可能な限りヒアリングを行なった上で、6月に報告をまとめJリーグへ提出した。

●担当者の一存で算出されていた入場者数

 調査によれば、入場者数上乗せが行なわれた期間は、2015シーズンから今季第6節までの足かけ3年。その間に行なわれたホームゲーム全46試合中、資料が見つからずに上乗せの有無が確認できなかった2016シーズンのJ2第2節を除く45試合で、過大に入場者数の申告がされたという。

 上乗せされた人数は45試合で合計24,233人。上乗せの最小は2016シーズンJ2第37節(10月23日、レノファ山口戦)の81人、最大は2015シーズンJ2第21節(7月4日、大宮アルディージャ戦)の1,400人である。この期間内に入場者の算出を行なっていた担当者は1名で、この人物の担当した期間が、そのまま上乗せが行なわれた期間であること、追調査でも2013・2014シーズンは不正がなかったことが証明されたことから、上乗せはこの担当者によって行なわれていたことが判明した。

 クラブによるヒアリングに対し、担当者は「入場者の定義や、集計の仕方を十分に理解していなかった。勘違いしていた」として意図的に上乗せを行なったことを否定。本来は入場者に含まれない運営関連スタッフや、入場券を持たない無料観客などを誤って入場者に加えていたと回答したという。

 V・ファーレンはJ参入以来、原則として運営を委託された業者が入場口からの来場者数を集計してクラブ担当者に報告、これに別のクラブスタッフが報告する「入場口以外から来場した車椅子観戦者およびその付添人、VIP来場者」の数を合計して入場者数を発表してきた。この一連のやりとりはインカムを通じても行なわれていたのだが、チェック体制などがほとんどなく、担当者の一存で算出されてことは間違いないようだ。

 この担当者は、会社や上司から上乗せの指示や圧力などについても「無かった」と答えており、あくまで「入場者算定ルールや算定方法の認識不足」が原因の個人的な間違いであったと説明したという。

●昨季までのメインスポンサーが責任を負うことのやりきれなさ

 ヒアリングで問題の担当者は「広告収入減を避けるために行なった」という周囲の見方を否定しているが、上乗せの背景として苦戦する入場者数があったことは十分に考えられる。

 V・ファーレンは、J参入から2016シーズンまでの4年間で2度「J1昇格プレーオフ」に出場しているが、Jリーグ参入初年度の2013シーズンに129,517人を記録後、翌シーズンには3万人弱が減少。その後も集客は伸び悩みクラブにとって大きな課題となっていたのである。

 その中でも担当者は、今年2月のサポーターズミーティングで「2015シーズンからは微増の傾向」と入場者数について説明しているが、上乗せ分を修整した入場者数は2015シーズンが97,304人、2016シーズンが97,125人と共に10万人に達しておらず、減少は続いていたのである。

「集客に特効薬はない」とはスタジアムビジネスの基本であるが、年々減少する集客数が、入場者へのホスピタリティ向上やPRなどで地道に入場者を増やす余裕を奪い、安易に数字だけでも集客増を達成したいという空気を生んでいた部分はあったはずだ。

 今回の公式試合入場者数上乗せの問題は、現在、クラブの運営を行うジャパネットグループが一切関与していないにも関わらず、前体制に代わって責任を負うことで終息することとなった。

 だが、現在クラブの運営を行うジャパネットホールディングスは、今年の4月までチームのメインスポンサーとして広告費を出していた側であり、上乗せが最大に行なわれた試合が、ジャパネットの冠マッチであったことを思うと、何ともやりきれないものを感じずにはいられない。

●地元でも確実に支持を集める高田社長の姿勢

 問題の担当者は6月にクラブを自主的に退職し、近いうちに別のJクラブのスタッフになるという話も聞いた。上乗せされた入場者数を見慣れてしまっていたために、スタジアムでその日の入場者数がアナウンスされると、その数字に落胆するサポーターも少なくはない。そういう意味では、きれいに解決した結末ではないかもしれない。

 だが、高田社長は「我々が運営に関わる以前に行なわれた問題ではあるが、それを含めて、クラブを引き継いだからには責任を果たす」と強く、そして穏やかに全てを受け止める構えだ。

 そして「襟を正して乗り越え、すばらしいクラブにするよう頑張りたい」という言葉どおり、クラブはすでに再発防止策として入場ルールやチェック体制の見直しに着手。現在は一切の上乗せがされない数字が発表され続けている。

 そして、こういったトップの姿勢は地元でも確実に支持を集めている。話を聞いた20代のサポーターは「長い間メインスポンサーとして、経営危機の時は支援先として、そして今回。ジャパネットさんは、もう3度もV・ファーレンを救ってくれた。今度は自分たちが一人でも多くの人をスタジアムへ誘ってクラブの力になりたい。」と語り、試合告知チラシの作成や配布をこれまで以上に行っていくつもりだという。

 スポンサーにも迅速な調査や対応を評価する声は多く、今回処分を下したJリーグの村井満チェアマンも「不正確な数字が計上されたことは大変残念。現在、新経営陣が指揮を執ってくださっていますが、早く健全化することを願っています」とクラブへエールを送っている。

「選手、スタッフ、社員……今は、みんなで一緒に乗り越えていこうと常に話していて、今回のことも前向きにみんなで乗り越えるんだとなっています」

 公式試合入場者数上乗せの問題に関する会見中、高田社長はこう語った。災い転じて福となすではないが、図らずも今回の問題を通じて、クラブとクラブを取り巻くサポーターのベクトルは一つにまとまりつつある。雨降って地固まるの言葉どおり、V・ファーレン長崎にとっての長い梅雨が終わるとき、クラブの土台はもっと強くなっているはずだ。

(取材・文:藤原裕久【長崎】)

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