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コーネリアス、約11年ぶりの新作リリース!  [FRaU]

7/28(金) 12:02配信

講談社 JOSEISHI.NET

かつて'90年代に「渋谷系」の旗手として一世を風靡した小山田圭吾は、いまや海外の大物アーティストにも愛される最先端ミュージシャンに。

なぜコーネリアスは世界的な「音響ポップマエストロ」となったのか

 コーネリアスが久々にリリースした新作『Mellow Waves』が素晴らしい。アルバムは、いわば枯山水のような美しさを持ったエレクトロニック・ポップだ。ミニマルなビートが繰り返され、抑揚を抑えたヴォーカルで素朴な言葉が歌われる。一つ一つの音が極限にまで研ぎ澄まされ、磨き上げられている。J-POPやEDMの主流とは全く違う発想のサウンドだ。先鋭的な、しかし確実に心地よさと人懐っこさを持ったポップソングが展開されている。国内だけでなく海外でも評価の高い彼。新作はおそらく「今年の日本の音楽シーンを代表する一枚」という評判を集めるのではないだろうか。

 とは言え、前作『Sensuous』からは約11年ぶりだ。さすがに名前を聞いただけではよく知らない人も多いだろう。この記事では、なぜ彼が「最先端の音響ポップマエストロ」として世界的な評価を獲得するようになっていったのかを解説したい。

 コーネリアスとは小山田圭吾によるソロ・プロジェクト。'90年代に「渋谷系」と称された音楽ムーブメントの中心的存在として人気を集めたアーティストだ。同じく渋谷系の象徴となったのが小沢健二。彼も今年2月に19年ぶりとなるシングル『流動体について』をリリースしている。かつてフリッパーズ・ギターでタッグを組み、'90年代を彩った二人が、2017年、共に音楽シーンの最前線に戻ってきたことになる。

 ただ、重要なポイントは単なるカムバックではないということ。どちらも過去の自分を再生産するような作品ではなく、あらたな進化を遂げた音楽を作ることに挑戦している。特にサウンド面、音響面の革新を続けてきたのがコーネリアスだ。

 ソロ活動開始当初は過去のポップスのオマージュやサンプリングを主体にしていたが、4作目『POINT』で独自の方法論での音楽性を獲得。その後は一つ一つの音を磨き上げ、絶妙に配置するミニマルな手法を追求するようになった。そのサウンドセンスが海外アーティストから絶賛を受け、ブラーなど数々のリミックスを手掛けることになる。前作『Sensuous』以降も、オノ・ヨーコとのコラボレーション、YMOへの参加、ベックとの共演など数々の共作や共演を重ねてきた。

 
 独自のサウンドがミュージシャンに支持され、世界的な評価を高めていったコーネリアス。待望の新作も、そのセンスが波紋のような「波」を広げていく予感がする。

「Mellow Waves」
小山田圭吾のソロユニット=コーネリアスが完成させた約11年ぶりの新作は、ミニマルで洗練されたエレクトロニック・ポップ。坂本慎太郎が歌詞を手がけた「あなたがいるなら」など、どことなく切ない歌心を感じさせるナンバーも聴きどころだ。

PROFILE

柴那典さん
音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。著書に『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)ほか。共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)が好評発売中。