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彫刻家が空間に表現するジャズピアノの音とは?

7/28(金) 17:31配信

GQ JAPAN

1970年代後半よりアーティストとして制作を開始し、現在はパリ国立高等美術学校で研究者・教育者としても活動を続けるエマニュエル・ソーニエ。銀座メゾンエルメス フォーラムで、ジャズピアニストのセロニアス・モンクへのオマージュをテーマに、10月31日まで個展を開催している。

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展覧会は楽曲のように3つのパートで構成されている。1室目を占めているのは、《ATM》と題する作品。フランスの4つの地方で拾い集め、燃やした流木をパリ近郊のアトリエで整形した彫刻作品と、針の形状をしたガラス管を床と壁面に配置したインスタレーションだ。

「この作品は、パリのパレ・ド・トーキョーで手がけたインスタレーションの要素を銀座エルメスの空間に合わせて再構成した新作だ。個別の彫刻作品である流木をどのように配置すると空間にリズムが生まれるか。ジャズと同じように空間でインプロヴィゼーションを行なった。それぞれの流木を結びつけ、戦わせ、ダンスさせ、セッションを展開した」

ソーニエが作品を初めて発表したのは1975年のこと。繊細なデッサンを手がけ、80年代に入ってガラス彫刻で注目を集めるようになってからもデッサンを続けてきた。彫刻作品を用いて、空間に即興でイメージを描き上げるためのトレーニングのようなものだと語り、白壁と窓からの自然光を生かしながら、炭化した流木とガラス管の黒で空間にデッサンを描き上げた。

「19歳でどうやって生きていくかを考えたとき、自分はアーティストになることを決意した。22歳で初めて発表した作品は白い紙に描いたデッサンで、思い返してみるとこのインスタレーションと不思議なほどに似ている。デッサンや彫刻、インスタレーションと手法を変えて制作を続けながら、再びアーティストを志したときに抱いたイメージに立ち戻ってきたのかもしれない」

今回の展覧会のテーマとなったのは、ジャズピアニストのセロニアス・モンクへのオマージュ。そのコンセプトで作品を手がけるうちに、不思議な巡り合わせがあったという。今年がモンクの生誕100年であり、さらには、ソーニエ展で50回目の企画展を迎える銀座メゾンエルメスの建物を設計したのがレンゾ・ピアノ。モンクの楽器の名を持つ建築家だったということも会期間近になって知ったのだ。「モンクのお化けがいるみたいじゃないか?」と、笑いながらソーニエは話した。

「私はかなり若いときにモンクを知り、すぐに魅了された。すべての音源を聴き、モンクのピアノから多くのものを受け取ってきたのだが、あるベルギー人作家が書いたモンクの伝記に『モンクは彫刻家のように音楽を削る』と書かれているのを読み、すごく納得した。彼は音と身体的につながっていた。演奏者として即興でピアノを弾くし、作曲家として緻密に曲をつくりもする。しかし、モンクの曲を誰か別のミュージシャンが演奏すると、大概はつまらないものになってしまう」

“オリジナルであること”を重視して発展してきたジャズという音楽の歴史において、セロニアス・モンクは比類なき独創性を備えたピアニストであり作曲家として屹立する存在だ。不協和音やリズムのズレなどを巧みに使った即興演奏で聴衆を魅了すると同時に、さながら物質のように音を扱い、簡単に真似ることを拒む楽曲の数々とスタイルを残した。

「モンクが作った音楽は、モンクという人物そのものだった。モンクが音の断片を独自の方法で紡いで音楽を表現したように、私も個別の彫刻作品を関係させることで《ATM》というインスタレーションを手がけた。空間や光と自分の作品をどのように関係させるか。それが私の表現するモンクへのオマージュだ」(ソーニエ)

最終更新:7/28(金) 17:31
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