ここから本文です

陸自の「クーデター」を許すな

7/28(金) 6:15配信

JBpress

 稲田朋美防衛大臣が連続する防衛省内部からのリークによって揺さぶられ、ついには安倍政権の屋台骨まで揺るがされる事態になっている。リーク元は陸自幹部との説が濃厚だが、これは、まさしく“クーデター”である。

 今や、安倍首相と稲田大臣は民主主義の防波堤となっている。以下では文民統制の観点から、耐えがたきを耐え、忍び難きを忍び、稲田防衛大臣を続投させなければならない理由を述べてみたい。

■ 陸自のリークはクーデターを意味する

 稲田大臣は、今や安倍内閣の中で最も評判が悪い閣僚である。失言も多く、メディア出演・答弁・記者会見も頼りない。記者懇談会に出ないこともあってメディア等からの視線も厳しく、連日連夜、稲田大臣と彼女を支えている統幕・内局に不利な一部の陸自幹部からと思しきリーク情報が報道されている。マティス国防長官等と丁々発止の議論ができるのかという不安もある。

 そのことは十分承知の上で、私は稲田大臣は最低限でも次の内閣改造、できれば、今後の道筋がつくまで短期間留任すべきであると主張したい。なぜなら、それに今や日本の文民統制の今後がかかっているからである。

 もし今回の件で、稲田大臣が辞職すればどうなるのか。歴史的な事実として残るのは、制服組がリークによって大臣を辞職させ、首相の政治生命すら危うくさせたという前例である。

 これは極めて危険な事態である。なぜなら、今後の防衛大臣が陸自に対して“忖度”せざるを得なくなってしまうからだ。その結果、陸自の不祥事を追及できず、陸自も含めた防衛省改革が不可能になるおそれがある。要するに、今後、優秀かつ熱意あふれる防衛大臣が誕生し、改革を断行しようとしても、真偽不明の内部リークで潰されてしまう、もしくは断念してしまうのである。これは、昭和初期の515事件や226事件といった軍部のテロによって、その後の戦前戦中における政治指導者や軍高官が委縮したことを思えば想像に難くない。

 もちろん、今回のリークは武力によるクーデターでも文民統制からの逸脱でもなく、大臣のマネジメント能力の問題だという指摘もあるだろう。だが、問題を矮小化させるべきではない。近年の米国では、「文民統制をいかに確立するかではなく、すでに確立された文民統制をどのように運用していくか」が主要な論点となっている。現代的な文民統制とは、武力によるクーデターをいかに防ぐかという古典的論点ではなく、軍の正規の手続きに拠らない、政策決定への容喙(ようかい=横からの口出し)をどう防ぐかが課題なのだ。

■ 米国でもあった軍部のリーク問題

 米国では2000年代から軍部等のリークによる政策決定への介入が相次いだ。それに対し、ゲーツ国防長官は強硬な態度で批判し、論争が巻き起こった。ゲーツ長官は「かつてのマーシャル将軍は、内部では遠慮ない助言を政治指導者に行い、それが拒絶されたとしても、マスメディアにそれを漏洩したり、抗議の辞職をしたりするような行為をしなかった。現在の軍人も見習うべきだ」と指摘している。

 この論争について、ハンチントンに匹敵する政軍関係研究の巨魁、ピーター・フィーバー(デューク大学政治学部教授)は、「軍人にとっての一義的な“文民”(シビリアン)とは国民なのか、大統領や国防長官なのか」という前提の違いによるものとした。そして、前者の立場に立つ者を「専門職制至上主義者」、後者を「文民至上主義者」とした。

 専門職制至上主義者は、「文民とは国民である以上、軍は政治指導者の誤りを正すためにリークを含めて世論(国民)に積極的に呼び掛けるべきである」とする。

 他方、文民至上主義者は、「文民(大統領や国防長官)は指揮系統の上位者として、積極的に軍事作戦計画の立案などに介入すべき」と考える。その際、「軍はあくまでも政権内部における積極的な助言に徹するべきである。リークといった行動をするべきではない」とする。

1/3ページ

最終更新:7/28(金) 6:15
JBpress

記事提供社からのご案内(外部サイト)

JBpress PremiumはJBp
ressが提供する有料会員サービスです。
新たな機能や特典を次々ご提供する“進化
するコンテンツ・サービス”を目指します。