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知的障害者が作る米からブランド日本酒を誕生させた支援者の信念

7/28(金) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 近年、障害者が生産するイチゴや日本酒がブランド製品として話題になっている。「障害を持っていても、最高の生産者になれる」を目指す障害者と支援者を紹介しよう。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

 7月のよく晴れた日、特定非営利活動法人(以下、NPO法人)ジョブファーム(千葉県・大網白里市)を訪問したところ、利用者が秋からのイチゴ栽培に向けて、ビニールハウスで土壌消毒をしていた。毎年、同じ場所に、同じ野菜や果物を栽培すると、土壌の養分が過剰になったり不足したり、害虫が増えたりなどの連作障害が起こる。その予防には米ぬかを使うことが多いが、日本酒の酒粕も利用価値が高い。10~20代の男女4人がスタッフとともに、酒粕をちぎっては撒く作業をしていた。

 ジョブファームでは、知的障害者や発達障害者に仕事の機会をつくるとともに、継続できるよう支援している(就労移行支援、および、就労継続支援B型事業)。特に、地域密着型の農業を取り入れ、イチゴや日本酒の原料となる酒米などを生産する。イチゴの「真紅の美鈴」、日本酒の「幸(さち)」ともに、地域ブランドとしてよく知られ、ふるさと納税品にも選ばれている。

● 監督者がいなくても くり返し作業はきっちりこなす

 「Aさん、もっと、そっと撒いてよ」

 「Bさん、ちょっと左側にばかり、酒粕が多くない?バランスが大切だよ」

 スタッフの声がけに利用者はアハハと笑いながら、手元の酒粕に注意を寄せた。4人とも、18歳で特別支援学校を卒業後、ジョブファームで就労訓練を続けている。

 女性のBさんは千葉から電車で通っている。「毎日、ここで働くことが楽しくて楽しくて」とうれしそうに答えてくれた。毎日9時半から、午前中2時間、午後2時間半、酒米やイチゴのほか、ブルーベリーやイチジク、レモン、ハマボウフウなどを栽培する。特に、酒米は無農薬で育てるため手間がかかる。

 「知的障害者」や「発達障害者」は、人によって個性は異なるが、おもに繰り返しの単調作業を得意とする。ゴールを明確にすれば、最後まできっちり、きれいに作業できる人が多い。ジョブファームと日本酒の事業で連携する一般社団法人ハッピーチョイス(詳細は後述)代表の白根邦子さんは「監視者がいなくても黙々と作業を続けて、いい加減なことはしない」と言う。

 その理由をジョブファーム代表の高橋正己さんは「正義感が強い人が多い。善悪もハッキリしているから」と障害者の特性を説明する。

 仕事や作業は繰り返し体験し、体を使って覚えていく。スタッフの支援を受けながら訓練を重ねることで集中時間が長くなり、作業の持続性や責任感が高まる。そうとはいえ、同じ作業ばかりしていると飽きてしまうので、スタッフはいろいろな仕事を組み合わせて応用力を養う。

 地域の農家の手伝いにも行く。後継者不足の農家に出向き、草取りや収穫などを手伝って工賃をもらう。重度の知的障害があっても、スタッフとともに農家へ出向く。働いて謝礼を得ることで、「自分も役に立った」と自信がつく。

 一方、知的障害者や発達障害者は「こだわり」を強く持っている人が多いため、「急な変化」への対応は苦手だ。天候の変化、突発的なできごとには弱いため、いろいろな作業を経験しながら変化に慣れていく。

 人間関係では上下関係や従属関係を嫌う。「スタッフと安心感や信頼感を構築できれば、感情の混乱を起こすことなく仕事は回ります」と高橋さんは言う。

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