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微表情を顧客アンケートに活用すれば、商品モニターの精度は格段に上がる

7/28(金) 15:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 こんにちは。微表情研究者の清水建二です。

 商品やサービスを購入した後、アンケート調査に協力をお願いされることがあると思います。アンケートに協力されている方の様子を観ていると、大抵、「大変満足」か「満足」にパパっとチェックを入れられ、記述式の空欄には何も書きません。

 この理由は明白でしょう。

 よほどその商品やサービスに満足あるいは不満を抱えていない限り、アンケートに答えるモチベーションが起こらず、めんどうだからです。とは言え、アンケートに無下に断るのも悪いから愛想で答える…その結果、チェックだけ出来る項目に「満足」をし、記述式には答えない、という妥協になるのだと思われます。

 これではアンケートは一種の儀式と化してしまい、マーケティングをする上で有効ではありません。

 お客さんの商品に対する想いをマーケティングで活用可能な形として計測するにはどうしたらよいのでしょか? 表情分析を用いたアンケート調査の研究から、次世代のアンケート調査の方法を考えたいと思います。

◆表情分析の調査からわかる顧客不満足度

 アメリカ中西部に住む119人の女性(=実験参加者)を対象に美容品・衛生用品・家事用品・健康用品への態度が調査されました。それぞれの商品を使っているときの実験参加者の表情の種類と強さが表情分析の専門家によって分析されました。計測対象の表情は、怒り・軽蔑・嫌悪・恐怖・幸福・悲しみ・驚き・愛想笑いの8つでした。

 調査の結果、わかったことは次の通りです(全体の詳細な結果は、参考文献を参照して下さい)。

 ①嫌悪、愛想笑い、怒り、軽蔑が最も多い頻度で生じ、幸福が最も少ない頻度で生じた。

 ②計測されたほとんど全ての表情が微表情含む部分的な表情であった。

 ③計測された愛想笑いの1/5では、悲しみ、怒り、恐怖が各々、同時に生じた。

 ということです。みなさんはこの調査結果を見て、何を考えますでしょうか?

 先の調査結果をまとめると、ネガティブな表情が大部分を占め、かつそれらの表情は微表情あるいは部分的な表情として表出され、愛想笑いが生じるときはネガティブな表情が隠されていることがある、と言ったところです。

 実験参加者が日本人ではないので単純に敷衍することは出来ませんが、この調査結果から考えられることは、一つに、美容品・衛生用品・家事用品・健康用品を対象にした場合、これまでの紙やwebを使ったアンケート結果が、「不満」以下の項目が多く計上されていなかったとしたら、ホンネが反映されていない可能性があるということです。

 次に、ホンネの表情は隠される、ということです。部分的な表情や微表情が計測されたということは、感情反応が弱い、あるいは本当の感情が表情に出ないように抑制された結果です。また愛想笑い+ネガティブ表情が計測されたということは、ネガティブな本当の気持ちがウソの幸福表情で隠された可能性が考えられます。

 最後に、満足や楽しさを最大化させる目的を持つ消費者調査の常識に警鐘をならしてくれます。消費される商品やサービスによってその消費経験というものは、心地よさを最大化し幸福を得ようとすることよりも、不快感を最小化することから満足を得ようとしている可能性があるということです。

◆次世代アンケート調査を考えよう

 最後に、これからの消費者動向調査に表情分析を加えることの利点とその方法を考えたいと思います。

 表情を計測することで、ある商品を消費しているどの瞬間にどんな感情が生じているかを詳細に計測することが出来ます。各感情には感情の機能があるため、表情から感情をとらえることが出来れば、消費者が何を望んでいるかを推測することが出来るのです。

 例えば、日焼け止めを肌に塗った瞬間の消費者の表情に嫌悪が浮かんだとします。嫌悪の機能は、不快なモノを除去するです。日焼け止めの触感を、嫌=除去したい、と直感的に感じたのでしょう。同様の効果を持つ日焼け止めが2つのメーカーから販売されているとしたら、嫌悪を感じる触感か嫌悪を感じない触感かだけで、商品の継続的な選択が変わり得ることがわかり、売り上げに影響を及ぼすことが予測できるでしょう。

 次に考えたいのが調査方法です。感情や表情分析の専門家が加わり、あらゆる変数が統制された実験質で調査が出来ることがベストです。しかし次善の策として、店頭でも消費者の感情測定は可能です。店頭でサンプル品を配り、その場で使ってもらいます。そのときの消費者の表情を表情を自動検出してくれるアプリで計測します。

 どういうシーンでどんな表情をするのか、表情と商品の購入との相関はどうか、表情と口頭による感想との不一致はどうか、こうした情報を蓄積することでマーケティングの世界にこれまでなかった新たな視点をもたらしてくれるでしょう。

参考文献

Matsumoto, D., Hwang, H. S., Harrington, N., Olsen, R., & King, M. (2011). Facial behaviors and emotional reactions in consumer research. Acta de Investigacion Psicologica (Psychological Research Records), 1(3), 441-453

<文・清水建二>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。術』飛鳥新社がある。

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最終更新:8/13(日) 18:40
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