ここから本文です

『東京タラレバ娘』最終巻で倫子が見つけた「答え」は?―― “タラレバ現象”とは何だったのか、社会学者に聞いてみた【前編】

7/28(金) 11:00配信

ダ・ヴィンチニュース

 2014年5月から『Kiss』で連載がはじまった途端に大ブレイク。未婚のアラサー女子たちに共感と恐怖の渦を巻き起こし、テレビドラマ化もされた『東京タラレバ娘』(東村アキコ/講談社)が、このたび発売された9巻で幕を閉じた。ひとつの社会現象を生み出したこの作品から見えてくる時代背景と社会構造とは? 女性が幸せになれる生き方はあるのか? 社会学者の水無田気流さんに話を伺った。

――ついに最終巻となった『東京タラレバ娘 (9)』、読んだ感想はいかがでしたか。

水無田気流さん(以下、水無田) 倫子が現実を受け入れたこと。こうだっ“たら”とかこうす“れば”ではなく、最終巻では新たな答えを見つけ今の自分を肯定したのはすごく大きいですよね。結末としては、よくありがちなラブストーリーになったかなと思います。ただ、女性が自分を変えずに男性を変えようとする方向に行ったのは新しいですよね。倫子が、アラサー最後の34歳の誕生日で、私はこのままでいくし、女子会だっていくらでもやったるわ! と言っちゃうわけですから。

KEYは最近流行りの“トラウマ系ヒーロー”

――KEYと倫子の関係はどうとらえましたか。

水無田 KEYは、最近流行りの“トラウマ系ヒーロー”なんですよね。恋愛に対してすごく臆病になったりひねくれた見方をしたりしているのは、実はかつて愛した人が死んだからっていうパターンは、近年の少女漫画や女性向け漫画に多く見られます。この傾向は、今の日本の女性たちの満たされなさを象徴しているように思えて何ともいえない気持ちになります。

 このヒーロー像は、私は『ノルウェイの森』の直子が男になったパターンだと思っているんです。直子はキズキくんとどうしても性交渉できなくて、そのキズキくんが自殺してしまう。主人公のワタナベは、それがトラウマになっている直子に惹かれていきますよね。村上春樹の小説は、あまりにもバルネラブルな(傷つきやすい)男性が、女性が自分のほうを100%向いてくれない理由をトラウマに見出すという「解法」を示し、結果として恋愛の不条理から主人公を免責し、ある意味救済する物語の側面があります。村上春樹の小説のヒロインは、壊れていたり消えたりしますが、KEYと倫子に関して言えば、それが男女入れ替わったところが面白いと思いました。

1/3ページ