ここから本文です

桐野夏生が挑む、文豪と女たちの「デンジャラス」な四角関係

7/28(金) 11:00配信

ダ・ヴィンチニュース

『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』…。名作を次々と生み出した文豪 谷崎潤一郎の原動力はどこにあったのか。桐野夏生さんによる最新刊『デンジャラス』(中央公論新社)は、谷崎潤一郎の晩年にスポットライトを当てた作品。その刊行を記念して6月28日(水)、桐野夏生さんのトークイベントが三省堂池袋本店で行われた。

――今回の最新刊『デンジャラス』は晩年の谷崎潤一郎と彼を巡る女たちを題材としていますが、桐野先生が谷崎の晩年に注目されたのは、どういう理由があったのでしょうか。

 谷崎の晩年は作家としても充実していますが、特に私生活が面白い時期です。谷崎は、松子さんと3度目の結婚をしました。松子さんには、清治さん、恵美子さんという2人の連れ子がいました。谷崎は惠美子さんを養女にします。そして、松子さんの妹で寡婦の重子さん、清治さんの妻・千萬子さんとも同じ屋敷で暮らすことになります。そして、常時6~7人はいる女中さんたち。『デンジャラス』では、この谷崎潤一郎の「家族帝国」について書いています。注目すべきは、この「家族帝国」のなかには、谷崎の血縁者は一人もいないということです。谷崎はこの10人あまりの家族を養う経済的な支柱となって、「王国」を支配していました。

――『デンジャラス』では、谷崎を中心として、3人の女性、松子・重子・千萬子がいわば恋愛サバイバルのような状況に置かれたとも読めると思いますが、主人公として重子さんを選んだのはなぜでしょう。

 谷崎松子さんは、ご自身で『倚松庵の夢』というエッセイを書いているし、谷崎潤一郎のミューズとも言われていますので、その人物像は何となくわかります。当時まだ20代だった千萬子さんも後に『落花流水』という手記を残していますし、谷崎との何百通もの書簡のやりとりをしています。千萬子さんと谷崎との間に恋愛感情がなかったとはいえないでしょう。だけれども、重子さんは谷崎の妻でも恋人でもないし、何も声が残っていない。地味な存在だけど、『細雪』の主人公・雪子のモデルになることで、小説のなかに現れてきた自分をよすがにしていたこともあると思います。こういう心の揺らぎを抱えた複雑な存在である重子さんを描きたいと思い、『デンジャラス』の主人公にしました。

1/2ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

【表紙】乃木坂46
特集1:乃木坂46 結成7年、その言葉は誰のものか?
特集2:フツーになんて生きられない。大人のための恋愛マンガ 恋する私たちはちょっとおかしい