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「ヒトラーへの285枚の葉書」監督が憂う、日本の危険な保守化

7/29(土) 17:00配信

文春オンライン

 ドイツ人作家のハンス・ファラダがゲシュタポの記録文書を元に書いたベストセラー小説『ベルリンに一人死す』を映画化した「ヒトラーへの285枚の葉書」(7月8日より全国順次公開)が、話題を呼んでいる。

 舞台は第二次世界大戦中のベルリン。一組の夫婦が、愛息を戦争で失ったことをきっかけにヒトラーへの静かな抵抗を始める。

「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」

 夫婦はナチスを批判するメッセージをしたためた葉書を、ベルリン市内に撒き始めた。その数285枚。途中から夫婦は、自由な言論こそがナチス政権を終焉に導くと信じ、葉書に「フリープレス」と書くようになった。

 しかし、葉書を拾ったベルリン市民の大半は、それをナチスの秘密警察・ゲシュタポに届け出た。

 ベルリン市民はヒトラーを熱烈に支持し、やがてヒトラーが張り巡らせた恐怖政治に支配されて自らの思考を停止していく。

大叔父がガス室に送られた

 ナチス支配下のドイツを覆った全体主義の恐怖を見事に映像化したのは、90年代に俳優として活躍し、自らもガス室に送られた大叔父を持つヴァンサン・ペレーズ監督。

 人々はなぜ「全体」に流されるのか。『東芝 原子力敗戦』の著者でジャーナリストの大西康之がペレーズ監督に聞いた。

大西 原作の『ベルリンに一人死す」の初版が刊行されたのは終戦直後の1947年ですが、2009年に英訳され、世界的なベストセラーになりました。監督がこれを映画化したいと思った理由を教えてください。

ペレーズ 私の大叔父はユダヤ人ではなくドイツ人ですが、精神疾患を患っていたため、(ナチスが身体障害、知的障害、精神障害のある人を殺害の対象とした)「T4作戦」によって、ガス室に送られ、殺害されました。全体主義による悲劇の一部です(註:T4作戦によって公的な資料で判明しているだけでも約7万人が殺害されたと言われる)。

 私は大叔父が殺された病院へ行きました。70人の患者が押し込まれた狭いガス室もそのままの状態で残っていました。それを見たとき「メッセージを発信しなくてはならない。悲劇を見た人々の声を保存しなくてはならない」と強く感じ、『ベルリンに一人死す』を自分の手で映画化したいと思ったのです。

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最終更新:7/29(土) 17:00
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