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中国で爆発的に人気のシェアサービスは、人々のモラルを変えるか?

7/29(土) 12:30配信

Wedge

 前回はグーグル検索に潜む情報の不正確性を議論し、「ググレカス」から「ググってもカス」な時代の到来を結論とした。グーグル側のアルゴリズム改善だけでは問題は解決不可能であり、検索を利用して出会ってしまうフェイクニュースや不正確な情報を、我々が社会的・心理的状況に応じて受容するその構造について考察する必要があるだろう。今回は中国のシェアサービスから、我々がどのような条件でシステムを受容するか否か、そのケーススタディを行いたい。

中国で大人気のシェアサービス

 モノやサービスを多人数で共有するシェア。管理や費用の節約にもなるため日本でもルームシェアなどの形で流行していが、中国では都市部を中心に「自転車シェア」が爆発的に普及している。

 自転車シェアシステムを簡単に説明すると、まず企業が提供するスマートフォンアプリから保証金(1500円~4500円程度)を支払う。すると街中にあるシェア自転車のロックを外すコードが送られ、30分につき10円程度で自転車が利用できるというものだ(キャンペーンなどが適応され、料金はそれ以上に安くなることも多い)。シェア自転車は数多く都市に点在し、基本的に利用後の自転車は街中に「放置」が可能なことが重要なポイントとなっている(詳細は後述)。

 自転車シェアは「ofo」と「mobike」という2つの企業が提供する同名のサービスがほぼ市場を独占しており、それぞれアリババとテンセント(Wechatで有名)が支援している。この両社はスマホ決済システムで争う中国の代表的なIT企業でもあり、ofoもmobikeもこのスマホ決済システムを利用している。どちらもこの数年で飛躍的に成長しており、上海などの都市部には100万台を超えるシェア自転車があるばかりか、自転車シェア企業はさらに自転車を投入し、その数は2017年中に中国全土で数千万台に及ぶ予定だ。

シェアサービス流行の背景

 日本にも同様のサービスは存在するが、圧倒的に短時間で利用者が急増した中国の自転車シェア。その流行の背景には2つの要因があるように思われる。

(1)電子決済システム

 本連載でも取り上げたスマホとQRコードだけで実行可能な「電子決済」機能は、中国ITの特徴とも言えるだろう。日本のように読み取り専用装置を必要とせず、決済にかかる手数料もほぼ無料ということもあり、都市部では現金利用機会の減少がレジなどの簡略化にもつながっている。電子決済はこのように非常に便利であることから、自転車シェア普及の大きな要因のひとつだ。

(2)中国交通事情

 自転車シェア普及のもうひとつの要因は、中国の交通事情にあるだろう。都市部の渋滞や、公共交通機関だけでは賄いきれない人口過密などの問題もあり、自転車は手軽な移動手段であることがうかがえる。日本においても1駅2駅程度なら自転車の移動の方が素早い場合も多いだろうが、中国ではその手軽さがさらに重要なものとなる。

 もうひとつは基本的に自転車が「放置可能」な点である。日本の場合、利用後は特定の駐輪場に自転車を返却しなくてはならないが、中国においては返却場所が指定されない(繁華街などで特定の場所が指定される等、多少の指定はあるが、日本に比べれば利便性は高い)。さらに自転車は都市部であればどこにいても確認できるほど多くの台数が投入されている。故にユーザーは自分の都合のよい場所から乗り、都合のよい場所で乗り捨てることが可能だ。

 ただし最近では放置自転車が邪魔だったり、景観を損ねるという理由の反対意見も多く、場所によっては駐輪場を指定する方向にあるという。こうした対応がどの程度ユーザーの利用に影響するかはわからないが、すでに大量のユーザーの「シェア自転車習慣」を獲得したことによる、企業の先行者メリットは大きい。

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最終更新:7/29(土) 12:30
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