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クラウド会計特許バトル。freeeは自滅で初戦を落とした --- 宮寺 達也

7/29(土) 12:33配信

アゴラ

7月27日、クラウド会計ソフトの特許侵害を巡ってfreeeがマネーフォワードを提訴していた特許訴訟の判決が東京地裁で下された。

判決はfreee側の請求を棄却するもので、マネーフォワードの特許侵害は認められないというものであった。

本特許訴訟は以前の記事、「freeeがマネーフォワードを特許侵害で提訴。人工知能は特許になるのか?」(http://agora-web.jp/archives/2023111.html)で取り上げており、私も結果に注目していた。

その記事では、「freeeが特許侵害訴訟で簡単に勝利するとは思わない。現時点で明らかになっている情報からの判断であるが、2つの理由から勝敗は5分5分と考えている」と書いている。なかなか情報が不足していたので何とも玉虫色の予想であったが、まあ大外れしなくて良かったと思っている。

さて、ネットではfreeeの敗訴を受けて、「freeeの敗訴は当然」「人工知能(AI)に特許が認められたら、今後のAI産業は終わってしまうから良かった」との意見が多い。

しかし、私は今回の特許訴訟から、人工知能の特許全体を語ることはできないと思っている。

freeeの敗訴は明らかな自滅であり、戦いはこれからが本番だからだ。

1つ目のミス。freeeは特許の選択をミスした

改めて、freeeとマネーフォワードの特許訴訟を振り返る。

freeeは自社の特許第5503795号に載っている技術を、マネーフォワードの自動会計ソフト「MFクラウド会計」が無断で使用しており、特許侵害だと主張した。

本件特許を特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage)で調べてみると、特許第5503795号の内容は、

“テーブルを参照した自動仕訳は、取引内容の記載に対して、複数のキーワードが含まれる場合にキーワードの優先ルールを適用し、優先順位の最も高いキーワードにより、テーブルの参照を行うことを特徴とする会計ソフト”

となっている。(読みやすさのため、一部意訳)

つまり、インターネットを通じてネットバンキングやクレジットカードの取引データを入手、記録し、取引データと勘定科目を対応付けた辞書を作成する。これがテーブルである。

そして、新たな取引データが入力されると、テーブルを見て、最も近い勘定科目を選択し、そこに自動で仕訳する発明である。

これに対して、マネーフォワードは「MFクラウド会計は機械学習を用いて、取引データが入力されると、毎回、新たな勘定科目を生成する。そのためテーブルは使用していない」と反論した。

これに対して、freeeは「テーブルとは、取引データを記載した集合体であり、機械学習も含まれる」と主張したが、東京地裁に却下された。

東京地裁は実際にMFクラウド会計の動作確認を行い、「機械学習により、これまでのテーブルに存在しない新しいキーワードに対応できるため、freeeの特許と異なる」と判断した。よって、freeeの敗訴となった。

しかし、ここでfreeeの大きな判断ミスがある。実は、freeeは機械学習の自動仕訳の特許も取得済であったのだ。

これは前回の記事(http://agora-web.jp/archives/2023111.html)でも、

“2件目の特許第5936284号も勘定科目の自動仕訳の発明であるが、こちらについて侵害を主張していないのは気になる。”

と指摘しており、私も気になっていた。

特許第5503795号(テーブル方式)と特許第5936284号(機械学習)の2つの特許を用いて、特許侵害を主張していれば、訴訟の結果も変わったはずだ。

特許第5503795号に記載のテーブル方式は機械学習より簡単であり、自動仕訳の基本である。実際、クラウド会計ソフト freeeはテーブル方式と機会学習の両方を使用しているようだ。

そのため、freeeはMFクラウド会計も当然、テーブル方式と機会学習の両方を使用していると考えたのであろうが、これは判断ミスであった。そんなに手間が違うとは思わないので、両方を侵害特許として主張するべきであった。

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最終更新:7/29(土) 12:33
アゴラ

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